2017/04/28

自動車教習所で初乗車した話


 本来ぼくのような人間は専属の運転手にベントレーで迎えにきてもらうくらいでなければならないのだけれど、まあできる限り節約するにこしたことはないだろうし、自分でできることはやらないとね。ということでこの春から教習所に通っている。通っていると言ったってまだ三度くらいしか足を運んでいないが。この前は諸々事前に受ける説明やテストが終わったので、初の乗車だった。
 いやあ、おっかなかった。おっかなすぎて、やっぱりぼくは運転手を雇った方がいいのかもしれないとうっすら思ったくらい。しかし、同時に愛犬のニタニタ顔なども浮かんできて、あれが元気なうちにいろいろなところに連れて行ってやるのだ、小さなカゴに閉じ込めて混み合った地下鉄で運ぶのなんてやってられるか!という気持ちも強くなり、まあとにかく犬のために、ただひたすら犬のためにがんばろうと思った。車に乗っているときのあの喜びようを思い出せば苦にならない、はず。
 海辺に連れて行ってあげるからねえ。

嘆きのMA-1


 すっかり暖かくなってしまい羽織っているひとも少なくなってきたけれど、この前の冬はとにかく道ゆく人々がMA-1を着ていたような気がする。みんな一斉に空軍に入隊したかというくらい、カーキやオリーブ色のフライトジャケットで溢れていた。
 というわけでぼくも少し前にMA-1を買った。

 もう冬も終わりかけていたので、お店に出ているものはだいたいぺらぺらのものが多く、なかなかこれといったものが見つからなかったけれど、なんとかちょうどいい厚さ、伝統的なフォルム、くすんだ緑色以外の色(少しは珍しい色がいいよね)等条件の合ったものと出会うことができた。
 ただ、アルファ・インダストリーズなどの実物仕様ではないので、細かいところがなんとなく安っぽく見えてしまい、だんだんアルファ製じゃないならMA-1と呼べないんじゃ?偽物では?などと考えるようになり、数時間前は嬉々として買って帰ってきたのにすっかり落ち込んでしまった。

 落ち込んで我慢ならなくなるとだいたいそのことをツイートに書くのだが、そこでフォロワーの方が言ってくれたのは、実物仕様はかっこいいが重かったりして日常シーンに合わないこともあるので、軽くて着やすいファッション特化型も悪くないよということだった。確かにぼくはこれまで上着といえばミリタリーの放出品ばかり着てきたが、どれも非常に硬くて重かった。実物の軍服なので機能性に長けているだろうなどとも思っていたが、果たして第二次大戦中のスカンジナビアの野戦服が冬の東京の日常に適した機能性を持っているだろうか?
 そういう実物ばかり着てきたことがかえって変なこだわりを呼び起こしてしまっていたんだろうな。思えば街で着るように作られたミリタリーウェア風のものを新品で買ったのは初めてだったから、無骨な古着との違いに戸惑ったのかもしれない。適度に暖かい上に軽くて着やすいフライトジャケット(モチーフの上着)、いいじゃないか。と、ちょっと声をかけてもらっただけでこの機嫌の取り戻しようである。
 だいたいアルファ製だってあくまで実物「仕様」なだけで、そこいらで売っているのは米空軍規格とはまた違うのだ。本物も偽物もないじゃないか。
 というわけで今日にいたるまですっかりお気に入りでずっと着ている。今日もたぶん着るだろう。暖かくなってきたから、Tシャツ一枚の上にこれを着るという形でもちょうどよかったりする。とにかく着心地のいい上着が見つかってよかった。

 MA-1といえば父親が着ているイメージが強かった。着ている姿もそうなのだが、昔ワールドカップ開催期間中にオランダに行った際にMA-1を着ていたので、オランダ代表の色に合わせて裏地のオレンジを表にしたら、行く先々で大歓迎されなんでもおごってもらえたという、大しておもしろくもなんともない話を繰り返し聞かされたせいもあるだろうな(本来は墜落したパイロットが救助の目印になるように裏返して着るためにオレンジになっている)。
 オランダが決勝戦まで残ったということは74年の西ドイツか78年のアルゼンチン大会だろうと思うけれど(どちらも開催国が優勝)、西ドイツ滞在の話もよく聞かされたので(「電車を降りそびれてもう少しで東側に行っちゃうところだった!」)74年の方かもね。オランダの話はそのMA-1を裏返しにした話しか聞いたことがないが、きっと子供たちに聞かせられない話もたくさんあることだろう。いや、案外本当に上着を裏返しにして歓待された話しかないのかもしれないが。
 MA-1を着てニット帽をかぶって犬の散歩をしていると、ふと通りかかった建物のガラスに映った自分のシルエットがだんだん父親じみてきているように見える。

2017/04/23

営業報告


 「SPUR」6月号ではヘイリー・スタインフェルド主演、ケリー・フレモン・クレイグ監督作『スウィート17モンスター』(公開中)を紹介しています。ティーンエイジャーの新たなバイブルということで、絵はダニエル・クロウズの漫画「ゴーストワールド」を少し意識しました。
 「ゴーストワールド」は久しぶりに読み返したんだけれど、やっぱりおもしろいなあ。また映画の方も観たい。

『スウィート17モンスター』にはコメントも寄稿しています。豪華な方々の中に紛れ込ませていただいて、恐縮です。
https://twitter.com/Sweet17Monster/status/848713546267480065


 「婦人公論」5月9日号のジェーン・スーさん連載「スーダラ外伝」もぜひ。今回は会社員からフリーランス(個人事業主)に転身したときのギャップや悩みが綴られています。
 『スウィート17モンスター』の記事と同時進行かつ、「ゴーストワールド」読み返していたときだったこともあり、スーさんの絵が少しイーニドぽいかもしれません。

2017/04/16

アクバー提督とテセック


 キャラクター単体でフィギュアっぽく描くというのを最近やっている。よく知っているものほどデフォルメの練習になるし、そのうちオリジナルのものもどんどん描いて世界観を膨らませたい。
 すでに作品集のページにはフィン、レイとBB-8、R5-D5を先行でアップしている。今回はアクバー提督とテセックをじっくり描いてみた。ふたりともお気に入りのエイリアン。アクバー提督について説明はもはや不要だろう。実はアクバーをはじめとする魚頭のモン・カラマリ族はテセックに代表されるイカ頭の種族クオレンたちと同じ星に住んでいて、たびたび喧嘩をしている仲。このことは正史扱いの『クローン・ウォーズ』でも描かれているので(一応該当エピソード中で仲直りしている)、まだ設定として生きているはずだ。犬猿の仲というやつだ。魚とイカだけど。


 モン・カラマリのアクバーが反乱同盟軍の優れた司令官であるのに対して、クオレンのテセックはジャバ・ザ・ハットの宮殿にたむろする犯罪王の取り巻きのひとりという、どうしようもないやつだ。だがほかの連中と違って頭が良いらしく(決めポーズがいかにも頭良さそうだ!)、なんとジャバの犯罪組織を乗っ取ろうと企むほど狡猾なやつと言われている。勇敢なヒーローたちがジャバを滅ぼしてなければ、テセックがそうしていたことだろう。もちろんジャバが倒されたあと、爆発する砂上船から逃げ出したテセックは宮殿に戻って全てを独り占めしかけるのだけれど、宮殿に住み着いていた、脳みそだけを入れた蜘蛛型メカでうろついているボマー・モンクの修道僧たち(住み着いていたというか、もともと宮殿は彼らの寺院だった)に取り囲まれ、無理やり脳みそを吸い出されて「改宗」させられてしまいましたとさ。

『最後のジェダイ』ティーザーより


 もし地面をひっかくことで赤い煙が漏れ出してるのだとしたら、赤い煙がウォーカーと戦う上で必要ということなのかな。ウォーカー戦が見られるということはわかったので、次はその歩行兵器の見た目が気になる。あまり期待はしてないのだけれど、オリジナル三部作のAT-ATも、プリクエルのAT-TEも好きなので、今度のも好きになれるといいな。

  EP7のティーザーほどテンションが上がらないのは、当時は新シリーズのヴィジュアルがお披露目される最初の機会だったのに対して、今回はかれこれもう立て続けに2本も新作が公開されたあとで、気分が平常運転に切り替わっているからだろうなあ。もちろんティーザー自体の内容もあるのだけれど。毎年新作を公開すると聞いたときからちょっと恐れてはいたんだよね。怠くならないかどうか。ぼくはちょっと疲れたな。それでも、本編そのものは何であれ楽しめると思うけれどね。
 とにかくEP5の劣化版のようにならないことを祈る。
 

2017/04/09

『レゴバットマン ザ・ムービー』(2017)感想


 実はジョーカーよりもトゥーフェイスが好きである。初めてこのキャラクターを認識したのは『バットマン フォーエヴァー』('95)でトミー・リー・ジョーンズがハイテンションで演じているのを観たとき。その後改めてティム・バートンによる第1作('89)にもまだ顔が無傷な正義の検事ハーヴェイ・デントとして登場していることを知った。『スター・ウォーズ』シリーズの我らが男爵でおなじみビリー・ディー・ウィリアムズが演じているところも興味を惹かれた。子供の頃は、別々の映画で同じ俳優が出ていることに気づくと、ものすごい大発見をしたような気分になったものだ。

 トゥーフェイスは堕ちた怪人である。元々は善人だった、というところがいちばんの魅力ではないだろうか。正義を追求するあまり、正義に裏切られ、物事の二面性に取り憑かれて、コイントス無しにはなにひとつ決断できなくなってしまう哀れな男。とあるコミックでの描写が興味深かった。アーカム精神病院に収監されていた際に、治療の一環として医師から彼の行動の全てを決定する唯一の道具、コインを取り上げられ、代わりにトランプのカードを数枚渡されて選択肢を2つ以上に増やされてしまうのだが、選択肢が「多すぎ」たためにトイレに行くかどうかもなかなか決められず失禁してしまうというくだりがあった。改めて彼がいかに「2」という数字に支配されているか、またそれに依存しているかがわかる。もはや彼はそれなしには生きられない。

 顔や身体が左右で全く異なるというヴィジュアルの魅力についてはもはや語る必要はないだろう。そんなものは見りゃわかる。今回のレゴムービーでは、左側は完全に映画作品で最初に登場したビリー・ディーのハーヴェイ・デントで、声も本人が当てている。右側はどうだろうか。派手なマゼンタ色はトミー・リー・ジョーンズが『フォーエヴァー』で演じたスタイルを思い出させるし、顔が骸骨になってしまっているところはアーロン・エッカートが『ダークナイト』('08)で扮したヴィジュアルを意識しているように見える。そしてダメージの感じが今までの実写映画やアニメ作品で描かれたような火傷とは異なり、溶けている感じに近いのは、レゴ人形がプラスチック製だからだろうね。おもしろい。
 そういうわけでトゥーフェイスというキャラだけ見ても、そこにはこれまでの映画版全ての要素が取り入れられた上で、デフォルメによって再解釈され、そのキャラクターが持つ元々の魅力を最大限に表現されている。それは作品全体に行き渡っているので、もし特にお気に入りの作品やキャラがいるひとは、そこに注目したらきっと楽しいはず。
 原作コミックはもちろん繰り返される映画化、アニメ、ビデオゲームによって本当に様々なスタイルを持ち、絶えず更新され続けているアイコン的キャラだからこそ、ここで今一度バットマンとはどういうものか、というのをシンプルに教えてくれる。

2017/04/03

営業報告


 Pen最新号の結婚特集では、「テクノロジーが変える、婚活やウェディングの形。」という記事にて、映画におけるAIやロボットと結婚・夫婦をからめたイラスト描いてます。もちろんあの夫妻とドロイドの姿も。


 発売中の婦人公論、ジェーン・スーさんの連載ではGuns N' Rosesのダフなど描いたりしています。ダフがいかにかっこいい年の取り方しているか、スーさんのダフへの想いが書かれています。