2017/10/06

ぼくの考えたSWプリクエル

 『スター・ウォーズ』シリーズの前日譚三部作、いわゆるプリクエル三部作を個人的に補完しておく必要がある。世代的にぼくはプリクエル三部作が好きな方だが、贔屓目に見てもここがこうだったらなと思うところは少なくない。オリジナルにある程度の敬意(果たしてどのくらいなのか自分でもわからないが)を払いつつ、部分的にこうしたらどうか、というくらいにところどころをアレンジして、項目ごとに書いてみたいと思う。
尚、各エピソードのことはEP+数字で表記する。


ミレニアム・ファルコンの旅

 オリジナル三部作でのミレニアム・ファルコンのような主役格の宇宙船の不在は、プリクエルにおけるSWらしさの欠如に繋がっている気がする。EP1では女王の船、ナブー・ロイヤル・スターシップに一行が乗り込んで旅をするが、もちろんファルコンほど個性を与えられているわけでもなく、登場するのもEP1一度きりだ。ハイパー・ドライブの故障で途中修理に立ち寄らなければならなかったり、女王を連れた悪の手先からの逃避行はファルコン号の冒険にも通じるところがあるが、ヌビアンにファルコンの代わりが務まっているとはとても言い難いだろう。

 EP2にも同じようなクロムメッキの曲線美を持ったナブー船でアナキンとパドメが旅をするが、この船も移動手段以上の意味はなにも持っていない。オビ=ワンのジェダイ・スターファイターのほうがよっぽど冒険の友っぽい(惑星ジオノーシスに置き去りにされてしまうが)。
プリクエルに登場するメカは、どれも独創的で色や形など個人的に好きなのだが、どうもひとつひとつが愛着を持って大事にされていないというか、使い捨て感が否めない。ちょうどそこにあったから使われているという感じ。いちばん乗り手が思い入れを持ってそうなものと言えばアナキン少年のポッド・レーサーだろうか。少年の手で組み立てられ、少年を束縛から解放するのに一役買う乗り物だが、もちろんその後の旅に同行することはない。

 EP1のナブー・ロイヤル・スターシップがEP3まで引き続き主人公たちの乗り物になればよかったのだろうか。いや、いっそミレニアム・ファルコンをEP1から登場させればいいのだ。後にシークエル三部作でもファルコンが主人公の愛機として飛び回ることを考えると、プリクエルにもファルコンが登場したほうが、シリーズ全体がファルコンの旅の軌跡にもなる。プリクエルでの持ち主から巡り巡ってハン・ソロへ、そしてレイに。様々な持ち主の手に渡っていく感じもファルコンらしい。
ではプリクエルで誰がそのオーナーにふさわしいだろうか。ぼくはとりあえずクワイ=ガン・ジンをファルコンの最初の船長にしてみたい。はみだしジェダイのクワイ=ガンが乗り回していた頃はまだガラクタのような見た目ではない。船体ではどの部品もおさまるところにおさまり、一貫した色使いのパネルできっちり覆われていて、几帳面に手入れされているせいか、それともジェダイ騎士団や共和国というバックアップがあるせいかレーザー跡等の傷やエンジンの不調は少ない。クワイ=ガン・ジンとオビ=ワン・ケノービの師弟はこの船で銀河中を旅してきたのだ。

 オビ=ワンがファルコンに乗り込んだことがあるなら、どうして彼はモス・アイズリーの酒場でハン・ソロと出会ったときに知らんぷりしているのか。簡単だ。かつてクワイ=ガンが所有していた頃はミレニアム・ファルコンなんていう名前ではなかったのだ。だから酒場で胡散臭いコレリア人から船名を聞いたときにはその船だと気づいていない。ドッキング・ベイ94に降りていってその姿を見たときに、初めてそれがかつて自分が乗っていた船だと気づく。その瞬間いろいろな記憶が蘇ってきて非常に感慨深くなるわけだが、なにも言わないでいたわけだ。いや、輝かしい時代を友にした船が下品なならず者の密輸船となり、あまりの変わり果てた姿にショックを覚えてなにも言えなかったのかもしれない。とにかく黙っていた。ルークに父親のことを聞かれたときに本当のことを話さなかったのと同じような心理だ。

 EP1ではクワイ=ガンとオビ=ワンが後にファルコンとなるこのYT-1300貨物船でナブーを危機から救いに行く。途中原住民のタフな戦士ジャー・ジャー(こいつの新しい設定はあとで説明する)と出会ったりしながら、アミダラ女王を連れて侵略軍から逃れる。しかし、船は追っ手からの攻撃でハイパー・ドライブに異常をきたし、修理のためタトゥーインに立ち寄ることに。あとはご存知の通りの展開だ。クワイ=ガンはナブーの戦いの最中にシスの暗黒卿ダース・モールとの闘いに破れて命を落とすが、船はオビ=ワンとその新たな弟子、アナキン・スカイウォーカーに受け継がれる。

 ファルコンにアナキンが乗り込むというのも重要だ。ハン・ソロのファルコンがどうしてあそこまで特別な船になり得たのか。それは天才的メカニックでありスピード狂でもあるアナキンの魔改造が基盤にあったからこそだ。クワイ=ガンの死後、オビ=ワンとアナキンはこの船で冒険を繰り広げるわけだが、アナキンは師に無断で様々な改造を施してしまう。オビ=ワンはそのたびにやれやれと呆れるが、いつもその改造のおかげで危機をかいくぐれたりするわけだ。

 EP5でダース・ヴェイダーがファルコンとその乗員を執拗に追い回すのは、もちろんその乗員を餌にルーク・スカイウォーカーをおびき出そうという魂胆もあったが、同時にファルコンがかつて自分と師が乗っていた船だと知っていたからでもあった。今や忌々しい記憶の残滓となったその船を完全に破壊して葬り去ることで、アナキンだった頃の記憶も完全に葬り去ろうとしたのだ。

 アナキンによる数々の改造と、クローン大戦の戦火により船はいよいよガラクタ的になっていく。ところどころ煤で汚れ、つぎはぎだらけになり、瑞丸版EP3の頃にはEP4のファルコンにぐっと近づいてくる。
アナキンの闇への転落、ジェダイ粛清によるオビ=ワンの隠遁に伴い、船はジェダイの持ち主たちの手を離れ、銀河のマーケットに流れて行く。あるときは平凡な貨物船として使われ、あるときは海賊船と、様々な人々の手に渡っていき、優男なギャンブラーの持ち物となり、そのギャンブラーを打ち負かした密輸業者ハン・ソロの手に渡ることになるのだ。
ミレニアム・ファルコンを登場させることでプリクエルもオリジナルもシークエルも繋がってくる。まあ、若干世界が狭くなってしまうところもあるが。


タフな戦士ジャー・ジャー・ビンクス

 プリクエル世代なのでジャー・ジャーは個人的には普通に好感の持てるキャラクターである。むしろ原初的なイメージではこいつこそSWのキャラって感じさえした。まあ、今はそこまで思わないが、それでもジャー・ジャーは「幼少の頃のSW」のイメージと結びついている。というか、クリーチャー・デザインとしては普通に良いと思う。

 とは言え、落ち着けよお前と言いたくなるシーンはいっぱいあるし、訛り(と言っていいのだろうか)は本当にひとを馬鹿にしているとしか思えない。そこでジャー・ジャーを出来損ないのバスター・キートンからタフな戦士へとアレンジしてみよう。ああ、本当に良い意味で彼がキートンやチャップリンの雰囲気をまとい、SW世界にうまく溶け込んでいたら大成功だったのになあ。

 アニメ・シリーズ『反乱者たち』におけるゼブというキャラクターは、主人公一味におけるチューバッカのような頼れる異星人キャラだ(『反乱者たち』一味の場合はリーダーである船長も異星人だが)。大柄でタフで、少しひねくれていて乱暴だがユーモアと情に熱い戦士である。外見はチューバッカのボツになったデザインが取り入れられているが(そのことをネタにしているのか、自分を毛の無いウーキーにたとえるくだりがある)、チューバッカとは別個のキャラクターが確立されていて見事だ。

 チューバッカのポジションだが全く別のキャラクター。これをジャー・ジャーで実現できればどれだけよかったことか。というわけでぼくの考えるプリクエルではジャー・ジャーはゼブのようにタフとユーモアを両立させたキャラクターにしてみたい。とにかく身体能力が高く(沼に飛び込んで泳ぐジャー・ジャーは確かにチューイよりアクロバティックである)、パワーもありひとつひとつの所作が雑で乱暴だが、その分抜けているところがあって失敗してしまう。自分が引き起こしたドミノ倒し的な騒ぎに本人は気づかず至って平然というキートンっぽさ、チューイとは違い機械には強く無いのでわけもわからず無意味な作業を延々と続けるチャップリンっぽさなど。それでいてここぞというところでは頼りになる力持ちだ。本来ならグンガン族は偉大な戦士たちである。ジャー・ジャーは追放された落ちこぼれだが、それでも戦士としてのパワーを備えているのだ。

 乱暴者というイメージは食い意地を張るイメージともぴったり合う。このバージョンのジャー・ジャーもまたなんのためらいもなく露天に吊るされたカエルに舌を伸ばして食べてしまうだろうし、スカイウォーカー家の食卓でも行儀悪く舌を伸ばすことだろう。セブルバに絡まれるところでも、やられっぱなしではなく、持ち前の喧嘩っ早さが原因でもはや殺し合いにまで発展しそうなムードを、アナキンが止めに入るとか、いいんじゃないかなあ(アナキンも喧嘩っ早いのにね)。


オビ=ワンの酒場慣れ

 EP4でオビ=ワンは若きルークに対し、モス・アイズリー宇宙港の危険さについて警告し、案の定酒場で悪党にからまれたルークを助ける。酔っ払いの腕を斬り落とすという無慈悲さは、それまで温厚な老人にしか見えなかったオビ=ワンがめちゃくちゃ強いということを垣間見せてくれる(ちなみに小説版では腕どころか脳天から縦に真っ二つにしてしまう)。

 アンダーグラウンドな世界に慣れている様子はプリクエルでも見られる。EP2で暗殺者を追ってナイトクラブに入ったとき、オビ=ワンは弟子のアナキンに「一杯やりに行く」と言い残してカウンターに向かう。そこでドラッグの売人にからまれるが、お馴染みのマインド・トリックで退散させ、背後から忍び寄った暗殺者の腕を、例によって斬り落としてしまう。そりゃEP4の酒場も慣れてるよなと思わせるくだりである。
しかし、前日譚であるなら、どうしてそんなに暗黒街に慣れたのかという経緯を描写して欲しかったりもする。EP2のナイトクラブのシーンではすでに完成され過ぎている。というかEP4の酒場と同じことをしただけのような気がする。

 個人的には、EP1でクワイ=ガンとともにモス・エスパの酒場かなにかに入り、舐めてかかったためにゴロツキにからまれたところを師匠に助けられる等のシーンがあってもよかったのではないかと思う。ルークと全く同じ失敗はあからさますぎるとしても、クワイ=ガンに諭されるとか。酒場のことに限らず、EP1のオビ=ワンには未熟さがほとんどが見られず(優等生ということなんだろうけど)、もうちょっと修行中の弟子っぽさがあったほうが、前日譚らしさが出ると思うんだけどなあ。


クワイ=ガンの必要性

 オビ=ワンがそこまで未熟でないのなら、だんだんクワイ=ガンというキャラクターの必要性も疑問に思えてくる。名優リーアム・ニーソンが演じた偉大なジェダイ・マスターの存在を抹消するなんてことはさすがに勝手の利く二次創作でも躊躇われるが、それだけオビ=ワンが弟子っぽくないのだ。やたら崖っぷちでぶら下がったりするものの、失敗らしい失敗をほとんどしない(せいぜいライトセイバーを落とすくらい)。ギリギリやられそうだったとは言え、最終的に師匠を殺した敵を倒してしまうほどよく出来た弟子だ。

 クワイ=ガンがいないバージョンを考えるのなら、オビ=ワンは弟子を持たない一匹狼だったところに、アナキンという特別な少年が現れ彼を訓練することをヨーダに熱望するとか。現行だとオビ=ワンがアナキンを修行させたがるのって、クワイ=ガンの最期の望みだったから以上の動機を感じられないんだよね。タトゥーインから出発する際には新しく旅に加わったアナキンをはっきりお荷物扱いするし、彼を修行させたがるクワイ=ガンには反対する。それまでずっと嫌がっていたのにマスターが死に際にそう願ったからというだけで最後にはアナキンを弟子に取る。少なくとも観ている限りではそう見える。オビ=ワンとアナキンの関係についてはまた後述したい。


ベイル・オーガナ救出

 EP4でレイア姫のホログラムは隠遁する老オビ=ワンに対してこう告げた。
「あなたはかつてクローン大戦で父を救ってくださいました」
プリクエルにはレイアの養父ベイル・オーガナが直接オビ=ワンに助けられる描写はない。むしろオビ=ワンがベイルに助けられている(EP3にて、ジェダイ粛清後)。レイア姫は「ジェダイが共和国や元老院を守るために戦った」という広い意味で、「父を救った」という言葉を口にしたのかもしれないが、それでも少し違和感がある。そこはやはりプリクエルにてオビ=ワンがベイルの命を助けるくだりがあったほうが直接的でわかりやすいのではないか。レイアとパドメ・アミダラという実の母娘の共通点はもちろんたくさん描かれるが、養父ベイルにも、後のレイアを彷彿とさせる経験があってもよかったと思う。


クローン大戦の再構築

 「クローン大戦」という言葉だけはEP4の時点から登場する。ぼくは 2002年のEP2公開のときに本格的にSWにハマり始めたのだけれど、10歳の少年は25年も前に公開されたEP4にすでにこの言葉が出てきたことにわりと驚いたものだ。そんな昔から考えていたのか!という驚きと同時に、子供ながらに全然趣が違って見えるEP2とEP4を同じシリーズの話なんだなあと感じられた。
 そんなわけなので、リアルタイムでEP4を最初に観たひとたちはルークやレイヤのセリフにだけ登場する「クローン大戦」という言葉を聞いて、どんなものを想像したのだろうか。非常に想像を掻き立てられる用語だと思う。

 プリクエル以前のクローン大戦のイメージに関するヒントは、EP1公開よりも前、1991年から93年に刊行されたスピンオフ小説のシリーズ、スローン三部作に少しだけ見つけることができる。EP6で大敗した帝国を再建し、反乱軍が樹立した新共和国に反撃しようとする天才戦略家スローン大提督が、兵員補充のためにクローン技術を手に入れるくだりがあるのだが、そのことを知った登場人物たちは恐怖に震え上がる。クローン兵士の再来は、クローン大戦の悲劇が繰り返されることを意味していた。そこでは後に描かれるようなクローン大戦像とはだいぶ違う、無表情な兵士たちが絶え間なく投入され続ける、終わりのない戦争のイメージが語られる。悪夢的かつトラウマ的な戦争であったことが際立っているのだ。

 おそらくこのイメージにおいては、両陣営がクローン兵士を投入する戦争だったのではないだろうか。実際のプリクエルでも共和国がクローン軍、敵対する分離派がドロイド軍という、どちらも大量生産の兵士を投入するので、物量対物量の果てし無い戦いというところは再現されている。心を持たないドロイド軍もそれはそれで恐いものだが、両陣営ともにクローン軍だったら、より不気味で恐ろしいものとなっただろう。それに、クローン軍同士の戦争の方が、クローン大戦という名称がしっくりくる。もちろんナポレオン戦争みたいに片方だけの陣営にちなんだ呼び方をされる戦争はあるにはあるが。ドロイド軍の影が薄いんだよね。

 EP2でクローン軍が投入されて開戦するまでの展開も、どうも釈然としない点が少なくない。明らかに先に分離派の領域を侵したのはオビ=ワン、アナキン、パドメであることとか、そんな3人を救出するために大勢のジェダイが駆けつけたり(分離派との緊張状態に蹴りをつけようとしたのかもしれないが)、秘密裏に製造された明らかに陰謀の匂いしかしないクローン軍をなんのためらいもなくヨーダが連れてくるところとか。最後のが個人的にいちばんひっかかる。

 まずヨーダが全然陰謀の存在を察知していないところ。ジェダイはおろか共和国も関知していないところで、「共和国のため」という名目で軍隊が用意されていて、しかもその軍隊を注文したのは発注の時点ではおそらく死んでいたと思われるジェダイ・マスターなのである。いくらなんでも怪しすぎるだろう。怪しい上に、その軍隊とは戦うためだけに生み出されたクローン人間たちによって構成されているのだ。表向きには戦闘ドロイドや奴隷が禁止されている共和国にあって、どうしてこのような軍隊を容認できるだろうか。戦闘という特定の目的ために生み出されたクローン人間、これは戦闘ドロイドと奴隷を掛け合わせたようなものだ。そんなものを一刻を争うからといって賢者ヨーダが引き取って連れてくるのである。結果、クローン大戦は勃発した。

 分離派がドロイドを大量に製造、保有していて今にも共和国に攻撃を始めそうだったから、とりあえず理念や倫理、議論は後回して対処に向かったのだろうけれど、もう少しクローン兵士を使うことに抵抗があるような描写が欲しい。最終的に使うことにはなるのだが、そのあたりの葛藤を見せてくれたほうが物語に厚みが出来たのではないだろうか。もちろん、あんまりそっちにフォーカスするとそのことが際立ってしまうので、ほどほどにする必要があるけれど。
 でもEP2では一応、迫り来る脅威に備えるために共和国は正規軍を持つべきか否かという論争が起こっていて、パドメはその投票のために首都にやってくるんだよね。これまで大規模な正規軍を持ったことのなかった共和国が、一度でもその力を持てば果てし無い戦いが続くことになるだろうという懸念を持って、パドメは軍隊創設に反対するわけだけれど、そういった論争が持ち上がっているのは興味深い(今思えばどこぞの国も同じような問題に悩まされている)。同時にクローン軍の倫理性についての論争などもうまく織り交ぜられて入ればよりおもしろいのになあ。たとえばEP2冒頭からすでにクローン軍の是非が議論されているとかね。

 外側でクローン軍使用への葛藤が起こるのもいいが、クローン兵士自身が葛藤や苦悩に苛まれるという描写が多少はあってもいい。クローンたちがまったく悩んだりしないところがちょっと恐かったりもするのだが、たまに悩んでしまう個体が登場して始末されてしまうとか。なんだか『ブレードランナー』みたいだが、こういう話は『クローン・ウォーズ』にあってもよかったな。あるのかな。さすがのぼくも全話は網羅できていないが、確かジェダイ粛清命令であるオーダー66が誤作動したり、クローン軍やパルパティーン議長の秘密を知ってしまって脱走するクローンのエピソードはあった。彼は彼を脱走兵として追いかけた「兄弟」に撃ち殺されて終わる。

 『ブレードランナー』における人造人間「レプリカント」という名称も、複製を意味する「レプリケーション」から来ているので、クローンに通じている。クローン論争やクローンの苦悩などを盛り込むと、ブレランじみてしまうとルーカスが判断した可能性はある。そっちが主題ではないからね。でもなんとなく触れられる程度でもよかった。というかせっかくクローンを題材にしているのだから、そこを掘り下げないともったいないような気がするのだ。どうしても。

 たとえばレプリカントを製造するタイレル社のような企業が銀河に存在したらどうだろうか。実際にはクローニングは惑星カミーノの産業で、そこで軍隊が製造されるわけだが、カミーノアンがもっと商売熱心で、銀河中に自分たちの商品を売りたいと考えたらどうか。そこに大戦勃発とジェダイ抹殺を企むいち政治家パルパティーンの陰謀が絡んでくるのだ。パルパティーンはいち早くクローンの可能性に目をつけると同時に、裏の顔である暗黒卿シディアスとして分離運動を活発化させ、開戦への緊張を高める。シディアスとしてカミーノアンたちからクローン軍を買い、また共和国の議長パルパティーンとしてもクローン軍を買う。分離派はともかく共和国は民主主義なので反発や論争が発生するが、そこは議長の謀略と外面の良いカリスマ性でもっておさえつけてしまう。ジェダイは眉をひそめるが、彼らも元老院の決定には渋々従ってしまう。分離派がクローン軍を手に入れた以上、こちらも同じものでなければとても対抗できないことは皆わかっているので、クローン軍に頼るしかないのだ。カミーノアンは両陣営に兵士を補充し続けることになるが、彼らの立場は、なんか適当な法律だか協定だかで守られている。実際のクローン大戦でも確か銀行グループが両陣営に出資していたらしいし、なんかそういう感じで。ひとつの企業が両陣営に兵力を補充し続けるとか、なんかディストピアSF感ある。

 かくしてクローン軍同士の戦争が始まる。どちらも同じカミーノアンの製品であり、どちらもひとりの男の命令によって戦っている。ひとつの目的のために仕組まれた戦争。果てしなく続く戦いで星々は荒れ果て、市民は疲れ、ジェダイは理想を体現できなくなっていく。同一人物であるリーダーによってパワーバランスが調整され、分離派が優勢となる。共和国議長は厳しい状況であることを理由により一層戦時体制を強化し、市民の自由を制限した。そうこうするうちに分離派クローン軍は共和国中枢まで到達し、首都コルサントに攻撃をしかけた。首都が破壊され、激戦が繰り広げられた。

 やがてパルパティーン議長は共和国軍の大反撃を演出して英雄となる。首都に侵攻してきた分離派クローン軍も突如として降伏し、共和国軍のコントロール下に移る。この壮大な茶番により、絶望的な状況から首都を救い、希望をもたらした英雄を演出したパルパティーンの地位は、不動のものとなる。

 それでも戦争は続き、まだまだ分離派の脅威が健在であることを強調する議長は、非常時大権により次々と新しい議長令を発令し続けた。議長が直接指名した総督が各惑星に置かれて戦時における統治の効率化が計られ、元老院は形骸化していった。首都攻撃の傷跡は未だ生々しく、首都攻撃のような悲劇を防ぐために命令系統や手続きはより簡略化され、議長の権限は肥大化していった。もはやそれは皇帝といってよく、実際にも非公式にそう呼ばれた。

 ジェダイたちは変わり果てた共和国を憂い、コルサントを立ち去って遠い星でフォースの探求に努めようと決心するが、若きアナキン・スカイウォーカーは反発した。共和国中枢から離れるということは密かに結婚した妻とも会えなくなるからである。身重となった彼女を、スカイウォーカーはなんとしても危険から守りたかった。彼はまたジェダイという家族と議長という父親同然の友人との間で板挟みになり苦悩するが、議長が自らの正体をほのめかし、妻を守るためにはジェダイの技では足りないこと、ジェダイとともに立ち去るのであれば敵と見なし、妻の命もないだろうと告げられると、シス卿に怯え、最終的にジェダイの「逃亡」を議長に密告し、ダークサイドに教えを仰ぐのだった。議長はジェダイが敵に亡命しようとしたとしてその粛清を命じた。クローン軍を引き連れて聖堂を攻撃したのはシディアスから新たにヴェイダーという称号を与えられたスカイウォーカーだった。聖堂にいたジェダイは皆殺しにされ、銀河各地で任務に着いていたジェダイは現地のクローン軍に抹殺された。ジェダイ抹殺の際には各地で戦闘が中止され、両軍のクローン兵が一斉にジェダイを攻撃した。

 議長はジェダイの裏切りという非常事態を理由に、首都を封鎖して戒厳令を敷いた。情報が錯綜して混乱が起きるが、議長には好都合だった。ジェダイと親交を持っていたり、兼ねてより自分の政策に反抗的だった派閥の議員たちをも一夜のうちに粛清したのだった。ヴェイダーはそんな議員たちの抹殺にも手を染めたが、その所業は妻にも知れるところとなった。パドメは絶望したが、ベイル・オーガナによって連れ出され、オルデランへと逃れる。同じくコルサントを脱出したモン・モスマも合流し、パドメはそこで密かに小規模ながら抵抗組織が結成されつつあることを知った。

 やがてこの混乱を鎮め、再び危機を取り除くことに成功した議長は、とうとう"議会からの提案"を受ける形で帝政への移行を宣言し、自らを満場一致で推薦された君主とした。新皇帝から分離派の指導者たちの抹殺を命じられたダース・ヴェイダーはクローン兵を連れて火山惑星ムスタファーに向かい任務を遂行するが、密かに追ってきたオビ=ワンとの死闘に敗れる。

 粛清を逃れていたメイス・ウィンドウとヨーダは皇帝に戦いを挑むが、メイスは命を落とした。ヨーダもまた負傷するが、自我が独立して皇帝の命令に従わなかったクローン兵士たちが乱入し、皇帝を足止めする。ヨーダはクローンたちによって逃がされる。彼らは戦時中から自由意志を持つようになっており、脱走して姿をくらました者もいたが、共和国軍に残って行動を起こすタイミングを待った者も多かった。彼らは一連の粛清には加わらず、ジェダイを助け、オーガナ議員の一派と合流しようとしていた。皇帝を足止めした者は全員命を落としたが、残りはヨーダとともに逃れた。彼らは後に反乱同盟軍兵士たちを訓練することになる。

 クローン兵たちに火山の火口から救出されたヴェイダーは、コルサントに帰還する。皇帝はシスの芸術品として彼を復活させるよう命じ、かつて分離派のある将軍に施されたのと同じサイボーグ手術が行われた。皇帝は意識を失っているヴェイダーに対してシスの幻術をかける。彼の妻は行方不明となっており、報告では粛清の最中死亡した可能性があるとされていたが(オーガナたちの工作である)、そんなことを言えばヴェイダーが自分に牙をむいてしまう。そこで彼は怒りに駆られたヴェイダーが自分で妻を殺したという夢を見させ、それが事実であると思い込ませた。目覚めたヴェイダーは激しい怒りと後悔に苛まれ、シスの道を極めれば死者すら復活させることができるという皇帝の言葉にすがりつくのだった。これにより皇帝はヴェイダーにとって欠かせない師となることで弟子の裏切りを予防したが、ヴェイダーの強いフォースは彼に真実をうっすらと察知させていた。師は嘘をついている。だが彼から得なければならないものがまだある。それまでは従順な弟子でいることにしよう。かくして何度も繰り返されている欺瞞に満ちたシスの師弟関係が築かれた。

 一方パドメはオルデランで双子を出産し、衰弱した。
 この双子はスカイウォーカーの力を受け継いでおり、皇帝を倒すことのできる最後の希望だとオビ=ワンは主張した。ヨーダは子供たちを訓練すれば父親と同じような運命をたどるのではないかという懸念を抱いたが、他に望みはなかった。
 皇帝やヴェイダーから隠すため、男の子がオビ=ワンによってタトゥーインにいるアナキンの唯一の親類のもとに預けられ、女の子の方はオルデランに残された。オーガナは弱ったパドメとその娘を守るため、王としてふたりを家族に迎えた。当然パドメの存在は隠されたが、レイアは姫として表舞台に立ち、のちに最年少の帝国元老院議員にもなる。表向きのレイアの母親はブレハ女王であり、パドメとふたりでレイアを育てた。オルデラン女王とかつてのナブー女王は良き友人であった。
 レイアの成長とともにパドメはいよいよ衰弱した。王女が物心着く頃にパドメ・アミダラは息を引き取った。レイアのわずかな記憶に残っているパドメは、いつも物憂げな表情を浮かべていた……。

 なんだかだーっと書いてしまったが途中からクローン大戦どころかもうEP3を作り変えてしまった。別にこっちのほうがおもしろいとは思っていないが、思いつくままに書いた。とは言え一応個人的に釈然としなかったところはフォローした。ジェダイが共和国を見限って文明での権威よりも探求の道を選ぼうとするところとか、好きである。アナキンがキレてパドメを手にかけるところもなんだか言い知れぬアホらしさを感じずにはおれないので、このように変えてみた。より皇帝がずる賢く見えるし、アナキンへの同情の余地がある。
 オーガナとパドメの関係は、1980年頃にキャリー・フィッシャーがローリングストーン誌によるインタビューで触れたレイア姫の身の上に関する解釈を参考にした。曰く、レイアの母親は夫が闇に転落したのでキング・オーガナと結婚した。自身の母親の離婚歴や父親の薬物乱用などの過去と重ね合わせての彼女なりの解釈である。ぼくはこれが非常に気に入っている。なんか、ハリウッドっぽいなあというところもあるんだけれど、EP6でレイアが語る母親の記憶問題も解決する(ぼくとしては普通にブレハ女王のことを言ってるんだろうと思ったし、EP3のラストで彼女が登場するのもそのことへのフォローに他ならないんだけれど)。
 でも、パドメが本当にオーガナと再婚してしまうと、ヴェイダーから逃れた手前その存在を表に出せないパドメと、王女として表に出なければならないレイアを両立させるのが難しくなるので、あくまで実際のEP3のように、レイアは表向きにはオーガナ夫妻の養女とし、パドメはオーガナ家で保護される、ということにした。一夫多妻制にしてもいいかと思ったけどそれはあまりオルデランっぽくない。
 なんとかこれでいいんじゃないかな……。

 まだまだ補完したい点はいくつかあるし、時間が経ったらこのクローン大戦(というか改変EP3)についてもさらに改変したくなるかもしれないので、また書く。とりあえず今回はこのへんで。