ばかにでかい機材やデジタル処理のない時代ならではの巨大なセットや派手な衣装など、きらびやかなかつてのハリウッドの雰囲気がよくできていて、目を見張るのだけれど、だからこそその華やかさが永遠ではないということがうっすらと際立っているように思った。基本的にどんちゃん騒ぎで賑やかなのだけれど、後半での展開や、このあとに50年代のハリウッドがどういう運命をたどることになるかと考えると、まるで嵐の前のお祭り騒ぎに見えなくもないんだよね。40年代の黄金期を経て、皆この時代がまだ続くと思っているし、ティルダ・スウィントンが演じていたような記者たちによってハリウッドそのものが神話化され続けるのだけれど、その影には当然良い思いをしていない人々もいる。物語の主軸である誘拐事件そのものが彼らによって起こされ、ストーリーが進むにつれ彼らの正体やその動機がわかり、彼らとハリウッドの関係や神話化された俳優たちといった構図はこのあとやってくる暗い時代に大きく関わってくる。コメディといえど、この時期のハリウッドについて描く以上このことは避けては通れないし、ユーモアを交えていながら、「この黄金期はもうすぐ終わり、嵐がやってくる」ことへの予兆を見せており、そのあたりの史実と笑いのバランスがなんとも絶妙。時代をネタにしたブラックユーモアと言ってしまうことはできるけれど、終わりを予感させるからこそ、パーティがより幻のように見えてくる。
ジョシュ・ブローリン演じるマニックスが寝るのも忘れて方々を飛び回り、悪くないヘッドハンティングをもはねつけ、必死にその神話性を守ろうとしたハリウッド(まあ守ろうと努めていたのは雇われているスタジオだったかもしれないが)がどういう道をたどるのかは、7月公開の『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』を観ればよくわかる。趣は違えど同じ時代のハリウッドについて描いたこの2本の映画は続けて観るとおもしろいと思う。
それで、またぼくの悪い癖(寛大な人は個性と呼んでくれる)で『スター・ウォーズ』関連情報を織り交ぜると、主演のひとりであるアルデン・エーレンライクはシリーズのスピンオフ作品第二弾にて若き日のハン・ソロ役にほぼ確定しているらしい。ジャック・レイナーやタロン・エガートンが候補者に名を連ねる中、最有力候補なのだそうだ。本作ではカウボーイ俳優役で、憎めない粗暴さや田舎臭さを醸し出していたけれど、確かにあれはハン・ソロに通じるものがあるかもしれない。
それにしても宣伝されている感じではジョナ・ヒルもメイン・キャラクターなのだろうと思っていたのだけれど、ほんの少ししか出番がなくて残念だった。正直彼が出ているコメディということでかなり期待値が上がっていたのだ……。