20170920

図書館と猫

 図書館に本を返しに行った。本来なら期限は前日までだったが、うっかり忘れてしまった。なにかと心を持ってかれがちになっていて細々した予定を忘れてしまう。
 前にも一度図書館の本を返すのが一日だけ遅れてしまったことがあったので、そこまで怒られたりはしないことはわかっていたけれど、それでもやっぱり気分はよくない。そういえば子供の頃、市の図書館から本を返してくれという葉書が延々と届き続けたことがあった。言われていた本は隔週で学校の校庭にやってくる移動図書館のバスで借りたものだったけれど、とっくに返していた。図書室や図書館の本を借りたままにして本棚に並べているほかのクソガキ達と違いぼくは律儀な良い子だったのだ。結局その騒動は図書館の確認漏れだったことがわかってごめんなさいという葉書が一通届いて終結した。あらぬ疑いをかけてきた上に菓子折りも寄越さない図書館に対して素直で良い子なぼくは全然腹を立てたりしなかった。腹を立てたりしなかった。
 そんなわけでとぼとぼと図書館の近くまで歩いてくると、一匹の猫が垣根の中からがさごそと現れた。そういえば子供の頃に飼っていたインチキロシアンブルーのデイジーも、図書館の垣根からぼくの日常に現れたのだった。母が早々に女の子だと判断してデイジーと名付けたものの、呼び名が定着したあとにそうじゃないことがわかって、それ以降見るからにふとましい顔つきで体もがっちりしたオス猫なのにデイジーと呼ばれ続けた。母は図書館でよく絵本「ねこのオーランドー」を借りていて、確かデイジーを拾ったときも借りていたんじゃないかと思う。デイジーはオーランドーに似ていたな。
 垣根から現れたその猫はピンクの首輪をしていて、顔は丸くて耳の毛が薄かった。柄は腹や足の白いサバトラ。このあたりは愛想のない外猫が多いけれど、首輪をしていて外を出歩いているのは珍しい。ぼくが立ち止まると、「うぇー」とブサイクな声で鳴いた。そのままこちらにやってきて足元にすり寄ってきたので、頭を撫でて顎の下をかくと、そこそこと言わんばかりに後ろ足をぱたぱたやって自分でもかこうとする。そんなに綺麗な猫じゃなさそうなのでそのへんにしておいて、図書館に向かう。すでに手がかゆい。
「あのう、一日遅れてしまったんですが」
 言いながらペンギン・ブックスのトートバッグから借りていた二冊を取り出す。
「いーえー」
 と受付の女性が軽く言った。
 その「いーえー」がさきほどの猫の「うぇー」となんとなく響きが似ている気がした。
 返却手続きはすぐ済んで、ぼくは空っぽになったオレンジ色のトートを肩にかけなおして湾曲した自動ドアをくぐって外に出た。さきほどのところにまだ猫はいた。道の脇の砂地に寝転んでいる。
 近寄るとまたぼくの方に寄ってきたので、同じようにして顎の下の柔らかいところをかいてあげたら、またしても「うぇー」と鳴いた。
 手が非常にかゆくなったので家に帰って入念に手を洗って、今度はうちの犬を触った。