ディズニーが一連の王道おとぎ話の実写化で「美女と野獣」をやる前に、フランス製実写映画を作れたということが大きいと思う。ディズニーが取り組んでいるようなおとぎ話の現代化というか、セルフ・パロディとも言えるアレンジなどは一切見せず、「美女と野獣」そのものを忠実に映画化していると思う。
ヴァンサン・カッセルが呪いを解かれた後もどこか野獣っぽいところが良い。ぼくはずっとディズニー版でお馴染みの「呪いを解かれたらどこにも野獣要素のないハンサムになってしまう」というオチが釈然としなかった。呪いで変わり果てた姿にされていたのだから当然なのだが、それでもベルが心を寄せた野獣の姿がすっかり消えてしまうのにも関わらず、ベルがハンサムな王子と喜んで結ばれるというのはどこか腑に落ちない。コクトー版の「容姿が入れ替わるオチ」もとても不条理なのだけれど。
だから野獣のときも人間の面影があり、人間になっても野獣の面影が残る今作の王子はとても好ましく、これなら諸手をあげてめでたしめでたしと言える。