2015/02/24

婚姻届

 手続きが好きなときと嫌いなときがある。学生でなくなって以来やたらと役所に行って手続きをするようになったが、未だに行くまでが辛い。まだ済ませていない手続きは嫌いなのだ。そして役所に行って取りかかった際に、すんなり済まない手続きはさらにストレスを覚える。役所の人は悪くないが八つ当たりしたくなることすらある。
 好きな手続きとは言うまでもなく、すんなり済んだ手続きである。良い具合に進められている最中の手続きが好きだ。用紙への記入、署名、捺印が次々になされるリズムが好きだ。ウェス・アンダーソン映画に見られるような文具好きの心を刺激する手続きシーンなどたまらない。役所の手続きはもちろん、図書館の本の貸し出し、郵便局での事務、軍隊の命令書など、几帳面に進められる手続きは、紙の上で物事を整理して動かして行く様が、まるで机の上にお城でも建てているかのような感じで愛らしくすら感じる。もちろん、事務職がやりたいとはこれっぽっちも思わないけれど。実際の事務仕事にはぼくが見ている以上に膨大な情報が行き交い、ぼくのメンタルでは到底無理だろう。
 今日は好きな方の手続きが済ませられた。例によって役所に行くまでは少し憂鬱だった。書類に不備はないはずだが(その準備もだいぶ骨が折れたが)、ぼくは本人確認で出鼻をくじかれることが多い。運転免許がないから本人であることを証明できないのだ。要は写真付きの身分証がないとことでスムーズに進められないということなのだが、なにか釈然としない。とは言え相手も鬼ではないのでぼくが無免許でもちゃんと善良な市民であることをわかってくれる。それに変に身構えて行くと思っていたよりずっとすんなり済むこともある。今日は驚くほどすんなり済んでしまった。無事ぼくが川原瑞丸本人だと確認されたのだ。
 というわけでこのたび彼女と入籍した。とうとう好きな女の人がぼくの苗字になってしまったのだ!恐ろしい!でも氏名を書くのが少し簡単になるだろうと思う。