本日発売の「PRESIDENT WOMAN」9月号、特集「イヤな仕事も大スキになる!魔法の自己暗示」にイラスト描かせていただきました。表紙には本と映画の特集が際立っていますが、お手伝いしたのは職場の苦手を克服するアイデアに関する特集になっております。
最近点数の多いカットはデジタル描画でやっていましたが、今回は水彩着色です。デジタルだと線の強さや色のぱきっとした感じが際立つのが綺麗ですが、水彩だとやはり誌面で見たときに、紙との相性がよいですね。
そういえば、藤子・F・不二雄の大人向け短編でサラリーマンが主役の話が結構あるのだけれど、オフィスでのシーンとか、やり取りとかがすごくリアルな感じがしたのが印象的だった。会社勤めの経験がないぼくがリアルに感じるというのもおかしな話なのだが、当のF氏も会社勤めをしていないので(ほんの一瞬就職したが3日でやめたとか)そう感じさせるのがすごい。ここに、「会社を知らないひとが描いた漫画を読んで、会社という世界を垣間見る会社を知らないひと」という妙な構図が生まれる……。
やっぱりそれは優れた洞察力や観察眼、リサーチの賜物なんだろうなあと思う。本来自分が知らないはずの世界をリアルに描写できたら漫画家のみならず、イラストレーター、絵を描く人間としては最強ではないか。とりあえず、世のOLさん(この呼び方いい加減やめない?)の服装というのを、さらっと自然に描けるようになりたい。
もちろん伝えたいことや主な目的によっては、リアルさは二の次になることもある。『サザエさん』のマスオさんと穴子さんのオフィスでのシーンは、前から「こいつら一体なんの仕事してるんだ?」と思わせるくらい適当である。仲良く机を並べておしゃべりし(手にペンを持って紙になにか書いているようには見えるのだが……)、お昼ご飯を仲良く食べて、定時に退社してやはり仲良く飲んでくる。なんてお気楽なんだろう。サザエさんやおフネさんたち主婦の日々に比べるとまったく中身がないと思っていたのだけれど、あとで長谷川家が女系家族だったことを知ってちょっと納得した。サラリーマンの仕事についてもとよりリアリティがないというか、あのマスオさんと穴子さんのシーン以上のイメージがないんだな。そのかわり、編集者という比較的漫画家に近いところで働くノリスケさんの仕事についてはかなり具体性を持って描かれている。いろいろなことについてのイメージの引き出しが多い方がいいのはもちろんだけれど、ああやって作者自身の興味の度合いが推し量れるのもおもしろいんだよね。そのひとのパーソナリティが反映されることで作品の枠を出て、逆に現実感のある奥行きが生まれることもあるということか。