この絵の着想を得たのは、ある夜の散歩で通りかかった工事現場。うちの近所ではぼくたちが越してきた頃からずっと地下鉄の拡張工事とかいうのをやっていて、その地上部分も資材や入坑口なんかが並んで車道や歩道が変則的になっている。夜の散歩でその地上部分の現場の横を通った際に、ぽっかり開いた大きな穴を見かけた。地下の現場まで通じているらしく、オレンジ色の灯りが漏れていて、ガリガリとかギンギンとかいう作業音や男たちの声なんかが響いてくる。本当に地下を掘っているんだなあという感じでわくわくした。もっと近寄って覗き込んだら、ずっと下のほうにはつるはしやスコップで作業をする人々、行き来するトロッコなんかが見られたのだろうか(いつの鉱山だよ)。
そこでぼくの空想がはじまる。奴隷商人に売られたかわいそうなコーギーたちが短い脚でせっせと歩き、石ころや土を積んだ台車をひっぱったり、ヨイトマケなんかに従事させられている光景。現場監督の目線よりもずっと低いところでせっせと働いているものだから、奴隷コーギーたちはこっそりお互いの顔を見合わせて「がんばろうねえ」「うん、がんばろうねえ」などと励まし合う。泥だらけの顔で……。
かわいそうだが、なんて健気だろう。というわけでちょっとかわいい設定にして絵にしたってわけ。