2015/06/13

「マーベル・シネマティック・ユニバース」/「アベンジャーズ」への繋がり


 今回はイラスト記事での一作ごとの感想は割愛。一本ずつ書いていたら新作「アヴェンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」が公開してしまうどころか、年が暮れてしまう。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)は一作ごともおもしろいのだが、なにより全体としての繋がりや体系がおもしろいので、その系譜を簡単にまとめてみた。2008年の「アイアンマン」から始まり、ハルク、ソー、キャプテン・アメリカのエピソードが語られた上で、それらは一旦2012年に「アベンジャーズ」へと収束していき、さらにフェーズ2へと展開を続けていく。

 娯楽映画を地で行きながらも、キャラクターの背景をよく描いている。一作ごとがその主役キャラクターのプロフィールとなっており、他のキャラクターの映画とのリンクも随所に盛り込まれている。同じ役者が演じる同じキャラクターが繋ぎ役としてこっちの映画からあっちの映画へと駆け回り、別々の映画でありながら同じ世界を描いていることが伝わってくる。別々の監督が別々に撮った映画たちなのによくこれだけ整合性というか、調和を取れたものだと思う。特にそれまでソロで主演を張っていたヒーロ―達が一同に集う「アベンジャーズ」では、一体どうやって収拾をつけるのかと思ったが、これが綺麗にまとめられている。しっかりひとりひとりに見せ場が用意され(ヒーロー達だけではなく、今まで各映画に繋ぎ役として顔を出していた脇役にさえもだ)、映画観ている間はまるでカラフルなコミックのページをめくっている気分だった。
 もちろん全ての作品に原作者スタン・リーがカメオ出演している(マーベル映画のお決まり。あのじいさん、ヒッチコック気分かよ!)。

 「アイアンマン」は、特に日本の男子達を夢中にさせたのではないだろうか。天才技術者にして大企業の社長トニー・スタークは負傷した自身の身体を支えるためにハイテクなパワード・スーツを制作して着用する。この「自分で作って着る」というところに男子は夢中だ。日本の特撮ヒーローの「変身シーン」に通じるアイアンマンのスーツ装着シーンや、試行錯誤を繰り返してひとり工作に励むトニーの姿はまさに少年そのもの。続く「アイアンマン2」でも自分で黙々とスーツ制作を続けるトニーだが、アイアンマンの物語では「作る」という行為が重要な軸になっているのかもしれない。いずれにせよメカを作るという行為は大変魅力的だ。もちろん戦うシーンも爽快。ロバート・ダウニー・Jrにトニー・スタークというキャラクターが憑衣というか、ものすごくはまってるところも人気の理由。

 「インクレディブル・ハルク」ではすでに科学者ブルースが実験事故で怒ると緑色の巨人ハルクに変身してしまう身体になったその後から物語が始まるところが新鮮。怒りを沈める修行に取り組むブルースだが、どうしても緑色の巨人に変身してしまうという宿命と向き合う。スターク社がちらっと出てきたり、ブルースをハルクにしてしまう実験の元が、第二次大戦中にキャプテン・アメリカを生み出した研究と同一であるところなど、世界観の広がりを感じさせる。小柄なティム・ロスが悪者ハルク化するところも良い。本作でブルース/ハルク役はエドワード・ノートンなのだが、大人の事情で以降の作品では降板。ノートンのハルクは、変身前と後でのギャップが大きいところがよかった。「アベンジャーズ」ではマーク・ラファロが演じるが、この人はすでにごつくてハルクっぽい顔をしている。どちらのハルクも好き。

 「マイティ・ソー」のソーとは北欧神話の雷神トールに基づくキャラクター。ヒーローというかもう神様である。マーベルの設定では北欧神話の神様は別の星から地球に来て巨人と戦った宇宙人ということになっている。身勝手な行動で王国の平和を乱した罪で王である父親に地球へと追放されてしまったソーが、地球で出会った天文物理学者ジェーンたちとともに危機を乗りこえるお話。ジェーン演じるナタリー・ポートマンも、その助手ダーシー役のカット・デニングスもかわいいし、研究仲間セルヴィグ博士役のステラン・スカルスガルドは最近のぼくの推しおじさん。
 神様たちの住む宇宙側の話が壮大なのに対し、地球サイドの物語はとてもスケールが小さい。これまでのMCU映画とは違い、同じ地域から全然離れない。宇宙側のスケールとのバランスのためだろうと思うけど、これがまた良いのだ。宇宙側で大変なことになっているときに地球サイドはものすごくのほほんとしている印象。北欧神話であるためか、監督はケネス・ブラナー。ハリウッドのヨーロッパ人頼み。

 ぼくがMCUで一番好きなのは「キャプテン・アメリカ」。監督は「スタ―・ウォーズ」のスタッフとしてもお馴染みのジョー・ジョンストンで、彼は「ロケッティア」にて第二次大戦中のヒーローというレトロ・フューチャーな冒険活劇をみごと描いてみせたので、同じくナチと戦うキャプテン・アメリカにはもってこい。
 ときは戦時中、身体が弱いがひと一倍優しく愛国心を持つスティーブは徴兵検査におちてばっかりだったが、その精神を買われてスーパー・ソルジャー計画に被験者として参加、超人血清を打たれてひょろひょろだったのが瞬時にめちゃくちゃなマッチョになり(バックグラウンドがちょっと三島由紀夫っぽい)、星条旗に文字通り身を包んでナチスの科学部門ヒドラとそのリーダー、レッド・スカルと戦う。
 キャプテン・アメリカに技術提供をするのがトニー・スタークの父親ハワード・スタークだったりするところに世界観リンクがあっておもしろい。
 最終的に戦いに勝利するも、ヒドラの飛行機で北極に墜落してしまったキャプテン・アメリカは生きたまま氷漬けになってしまい、70年後の現代になって発見されて目を覚まし、アベンジャーズに加わる。ものすごい展開だが時代まで越えてリンクしてしまうのがMCUなのだ。

 そして上記5作で活躍したヒーロー達、そしてちらほらと登場していた脇役達が一同に終結するのが「アベンジャーズ」。果たして戦時中の軍人(超感覚が古くてカタい)、雷の神様(もう人間の存在を超越している)、金持ち社長(プレイボーイで自惚れ屋)、超危険な緑のクリーチャー(怒ったらもう抑止がきかない)といった面々がチームなど組めるのかと誰もが心配。しかも超人たちに加えてスカーレット・ヨハンソン演じる元ロシアの女スパイ・ブラック・ウィドウ(年齢設定がおかしいんだが・・・)や、サミュエル・L・ジャクソン演じる司令官フューリー(実際リーダーシップがあんまりない)、ジェレミー・レナー扮する弓矢の名人ホークアイ(地味)など、「普通の」人間も同じチームなのだからすごい。実際、戦闘シーンになると超人たちがド派手なアクションを繰り返す中、ブラック・ウィドウはハンドガンをドンパチ撃ち続けているし、ホークアイはひたすら弓を引いている。でも適材適所というか、それぞれが全然違う特色を持って互いに補い合うところがアベンジャーズの肝。大変楽しい映画となっている。

 以上。まずは「アベンジャーズ」までのフェーズ1のおさらいでした。「アベンジャーズ」以降、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」に向かって展開していくフェーズ2に続く・・・。