2014年の春から「週刊文春」(文藝春秋)で連載していた山内マリコさんの「お伊勢丹より愛をこめて」がこのたび文庫化されました。連載時にはモノクロだったぼくの挿絵も全てカラーで掲載される上、装画も描き下ろさせていただきました。タイトルや著者名、下部の「文春文庫」も手描きとなっております。装画の描き下ろしは初めてで、イラストレーターとしての目標でもあったので、とてもうれしいです。
週刊連載の際はモノクロの掲載でしたが、実際は全てカラーで描いていました。不慣れな始めの頃は、着彩したものがモノクロ誌面ではどのような具合になるかが、いまひとつつかめず(もちろんモノクロ変換の作業も自分でしていましたが、実際に紙に刷られた感じは想像するしかなかったわけで)、誌面で見ると思ったよりぼんやりしていた、なんていうこともあったのですが、途中からは「黒ベタがこれくらいあって、なにも塗らないところがこれくらいあるとメリハリがつく」、というようなことがわかってきてました。
装画以外では目次のちょっとしたアクセントを描きました。買い物エッセイに登場する数々のアイテムとともに、山内さんの愛猫チチモがいます。
帯がつくとこんな感じ。文庫本という非常に慣れ親しんだ媒体に自分の絵がついている、という実感がじわじわとやってきます。
帯がついていると、一見リッチなハイブランドの袋や箱ばかりが並んでいるように見えますが、
帯を取ると、その下には現代日常生活ではおなじみのお店の袋や箱が現れるギミックとなっています。ちなみに一番右端にあるのは、山内さんの地元・富山で唯一の百貨店、大和(ダイワ)の紙袋。
山内さんの著作が好きで、最初はいち読者でしかなかったのが、新連載の挿絵を描かせていただくことになったときは夢のようでした。文庫化で装画も描かせていただき、とうとう大好きだった作家さんの著作群の中に自分の絵が加わったと思うと、うれしくてたまりません。
雑誌連載の仕事は初めてでしたし、「週刊文春」という大御所となると自然緊張しました。毎週描くというのも初めての経験で、一週間の仕事ペースみたいなものがだんだん形作られたと思います。前述したような、「印刷された形をイメージして計算する」ということの必要性も学ばせていただき、連載がはじまったときと終わったときでは随分自分の描くものも変わり、技術面でも発展したところがあったと思います。これからもあの連載での挿絵の仕事はぼくのキャリアの基盤的なものとしていろいろな面で生きてくると思います。
「買い物とわたし 〜お伊勢丹より愛をこめて」は文春文庫より3月10日発売です。