2019/09/10

TABFに行った話


 7月のことになるけれど、TABFことTOKYO ART BOOK FAIRに行ったことを書くのを忘れていた。その名の通りアートブックのフェアなのだが、画集や写真だけでなく、個人制作のZINEが見どころ。ちょうど直前にその存在を知り、見てみたらおもしろいかもとひとから勧められてもいたので、足を運んだ。ZINEを作りたいと思っていたので参考にもしたかった。

 改めて、ZINEというのは基本的には個人が趣味で作るちょっとした冊子(冊子にも満たない場合もしばしば)のことで、呼び方はMagazineやFanzineの短縮から来ているらしい。言ってみれば同人誌みたいなものだ。個人だけでなくグループで発行することもあるし、当然販売もされる。安価な用紙にモノクロで刷ってホチキスで留めただけのものから、紙質や印刷、塗料にこだわって綺麗に製本したものまで多種多様なものがある。大判の新聞のような紙を折りたたんで作るパンフレットのようなものもあるし、手のひらを握って隠せるくらいの豆本サイズのものなど、その形式もいろいろ。内容も画集や写真集、漫画、詩、文章などなんでもあり。そのひとが発信したいことを印刷して束ねる、それがZINEである。


 これはかのミランダ・ジュライが書いたもので、サンフランシスコ発の雑誌「The Thing Quarterly」の「第1号」らしい。特定の紙媒体に縛られず、オブジェクトを出版するというコンセプトのもとに、10年間いろいろなひとといろいろな形の「雑誌」を送り出したらしい。まさに形に捕らわれないZINEの究極的なレベルである。ZINEは紙であることに最も大きな意味があるんだけど、これはさらに物であることに重きを置いているというわけか。

 


 紙に捕らわれないのももちろんかっこいいけれど、やっぱりぼくがZINEと聞いて思い浮かべるのはこういうやつらだ。コピー用紙にレーザープリンターでばばばーっと刷った感じ(「プリント」じゃなくて「刷る」が似合う)。画質など気にせず見えりゃいいというレベルの写真と、読めりゃいいというレベルの掠れたタイプ文字の列。ZINEの歴史にはバンドが自分たちのフライヤーを冊子状にした流れも入っていて、そういう雑だけど勢いのある雰囲気は純粋にかっこいい。


 結構長い時間見て回って、買って帰ったのはこれくらい。左上の「ピーナッツ」の漫画本はZINEでもなんでもない普通の漫画本だが、一目惚れして買った。ピンバッジは有名なZINEレーベルのマーク。残る二冊は非常にZINEらしいZINEで、イラスト・漫画主体なので参考になりそう。内容はもちろんなんだけど、ZINEというのはやはりそのフォーマットが重要で、そこをおもしろがるものでもあるなと思った。いろいろな作品を紙として、物として持っておくことの意義を、手軽に感じることのできる媒体。正直言って一回ぱらぱらめくったらもう二度と見返さなそうなものや、ちょっとアバンギャルドすぎてついていけないものもあったけれど、そういったものもオブジェクトとして持つ意味がある。飾っておいてもいいし、コレクションしてもいいのだ。じっくり読むものもあれば、何回もぱらぱらめくりたくなるものもあり、それ自体がアートとして完成しているものもある。ZINEはそういう雑多な自由を持っていると思う。
 そういうわけで、これらを参考に作ったぼくのZINEプロトタイプは、ひとつ前の記事の通り。