2018年6月23日

引っ越しから一週間

 引っ越して一週間、ようやく落ち着いたのでブログを書く。
 実家を出たときのことを入れればこれで人生四度目の引っ越しになるのだけれど、さすがに回を重ねるごとに荷物が多くなる。夫婦ふたりで生活していればなおさらである。大切なものを手放すのは、一度失敗したので二度としたくないが、できるだけ無駄なものを減らした生活にしていきたい。と、引っ越しが終わったばかりのときは思ったりするんだよね。どうせ増える。

 そういうわけで荷造りがいちばんしんどくて、引っ越し業者がやってきて運び出してくれたときにはほっとしたものだけれど、なんと食器棚の裏側の板に大穴を開けられてしまうというアクシデントが発生。こんなことそうそうないと思うんだが、どうしてこうぼくは間が悪いというか、こういうことばっかり起こるんだろうなあ。あとで修理業者がきて直しますと言われたけれど、分解できるタイプのものではないので無理矢理バラして元に戻すということになりそうだが、綺麗に直るのかねえ。

 こういう技術的なことに関しては、専門業者はすごいものを持っているから信頼できる、というような神話がなんとなくあると思うけど、ぼくは今回の引っ越しで別に日本だからって必ずしも優れてるということはないなと実感した。

 まずこれまで住んでいた部屋の内装工事が杜撰すぎてひどかった。大急ぎで張り替えたらしい壁はぽろぽろ崩れるし、コンセントの差込口のカバーが壁からズレて浮かんでいる状態。こんな適当な仕事あるのかよと思ったものだ。

 それで、新居にきてからもインターネットの配線をいじりにきたひとがどうも間の抜けた感じで頼りなく、おかしいなあおかしいなあとブツブツ言いながら家の中を探し回ったあと、結局最初に調べたプラグのところに目的の配線があった、てな具合で、最終的に出来上がったものはプラグのカバーからびよーんと新しく繋げたコードが伸びているという非常に不安定な絵面になった。

 別にもっと完璧にやれというわけでは決してない。大きな荷物を運んでいればどこかにぶつけてしまうのは当たり前だし、初めて訪れた見ず知らずの他人の家の中で目当てのものがなかなか見つけられないのも人間なら当たり前だ。この前役所の窓口はわりと融通が利くということを書いたけれど、ひとはわりと融通が利くし、わりと適当で、わりと頼りないものなのだ。専門の業者だからって大きな期待や勝手なものを押し付けるのはやめましょう。いや壊したものは弁償してもらうけど。
 そう考えると自分自身ももっと適当なところがあってもいいのか(いいのか?)。

 さて新しい家だけれど、まず明るい。床から天井まで伸びた大きな窓(旧居から持って来たカーテンの丈が全然足りない)からは完全に日が暮れるまで外の光が入り続ける。初めて内見に来た日は曇って雨が降っていたのだけれど、そんな曇天でも照明無しの部屋の中は明るかった。いいことだ。ついでに言えば部屋から月が見える。

 旧居はとにかく窓のない部屋で、午前中をある程度まわってしまうともう全然外の光が入ってこなかった。大きな道路に面しておりしょっちゅうトラックが通っては窓が震え、夜中まで変な灯りがついていて騒々しいところだった。ついでに言えば夜中はよくタクシードライバーが目の前の植え込みに用を足していた。デ・ニーロもびっくりのファンキーさである。

 そんな都会の暗部みたいなものを集約させたような地域から一転、絵に描いたような「閑静な住宅街」に越して来たわけだ。建物の高さに制限があるから空はとても広い。東京と言えど外れの方なので少し歩けば畑ばかりの懐かしい風景。あはははは、4年間ひどいところで我慢しているとこんなにいいこともあるのか。

 そういう「ちゃんとしたところ」ではそれなりに責任が伴うもので、ゴミの分別が非常に厳しいらしい。いや、パンフレットを見た限り普通だったのだけれど、今まで暮らしていたところが緩すぎたのだ。おそらく前のところもそれなりにルールはあったのだけれど、マンションのゴミ捨て場を見る限りほとんどのひとが守っていなかった。ほとんどのひとが守っていないと自分もだらしなくなってしまう弱いぼくである。

 今度からはそうはいかない。きっちりした善良な市民ばかり住んでいるところだろうから(周りの家はどれもまるで車のCMで寒い寸劇の舞台になってそうな新築ばかりだ)、ゴミも綺麗に出さなければならない。

 さっそくお弁当のトレイやレトルトのビニール袋をちゃんと洗って、ビニールと紙が一体になっているような包装は分解して、役所でもらったパンフレットに書いてある通りの形でゴミを出した。お弁当のトレイを流しで洗っているとき、自分がものすごい丁寧なことをやっているという気がして妙な恍惚感が降りて来たものだ。これがちゃんとした生活か。普通のひとのフリはこうやってするのか。

 そうして翌早朝、初めてのゴミを出しに、外にある金属製の大きなゴミ集積ボックスを開けてみると、中には生ゴミとペットボトルがごちゃ混ぜになった袋、毛布を丸めて袋に詰めたもの、はなから袋に入れていないお弁当のトレイ(洗っていない)などが満載だった。
 かくして新居での生活は始まった。