2019/10/14

大人の相槌

 何人かで集まっているときなんかに、興味のなさそうな、あるいは知らなそうな話題に自然に相槌を打てるひとは本当に大人だと思う。興味がなさそうで知らなそうというのも決めつけかもしれないが、しかし話の文脈上そのひとが知り得ないであろうことにうなずいていることが多いので、まあそう見て問題ないだろう。ポイントは自然であること。知らないのになにうなずいてるの、などという意地悪な指摘をさせることのない自然さである。その自然なうなずきは、話者をリラックスさせその舌をより滑らかにする。場が盛り上がる。だから大人として身に付ける技能なのだろう。もちろんぼくも立派な大人なので、何度かこれを試したことがあるのだが、ぼくがやるとどうも不自然さが際立つのか、「うんうん言ってるけど興味ないでしょ?」とはっきり言われてしまう。はっきり言うことないじゃないか、がんばってるのに。しかし、がんばらなければできないようならまだまだだ。大人の相槌はそいつがうなずくことに違和感を覚えさせない自然さあってこそである。わざとらしくうなずくよりは黙ってたほうがいいかと、よくわからない話題の際には静かにしていると、それもやっぱり「興味なさそうだねえ」などと言われてしまう。どうしろというのだ。興味がないことが多すぎる。というか、そういう場合は大抵興味とか以前に、ぼくが知らないひとや出来事の話題だったりするので、興味の持ちようがない。そこで自然な相槌、あるいは「へえ、そんなことがあるんですねえ」などと今初めて聞かされる立場をうまいこと使ったようなことを言えるといいのだが、まあそれができたら今頃社交界のスターだよな。