2015/08/03

「ヤング・アダルトU.S.A.」(長谷川町蔵・山崎まどか共著/DU BOOKS)にイラストを描かせていただきました




 8月6日木曜日にDU BOOKSより発売となる、長谷川町蔵先生と山崎まどか先生の共著「ヤング・アダルトUSA」にイラストを描かせていただきました。表紙にも使われています。多屋澄礼さんも挿絵を描かれています。
 ブルーとイエローが印象的な本ですが、ぼくが今とても好きな二色なのでうれしいです。ブックデザイナー藤田康平さんの手によって挿絵も元の絵よりずっとかっこよくなっていると思います。感謝しきれません。

 映画、ドラマ、小説など、ポップカルチャーからアメリカのティーンエイジャー文化を紐解き、「アメリカの思春期」について著者のおふたりが語るという内容になっています。
写真左下のブルーの栞がディスクユニオン、その上の「ブレックファスト・クラブ」の絵柄の栞がタワーレコード購入特典、缶バッジはSHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS限定販売です。
 8月7日金曜日には、ブックファースト新宿店にてイベントが開催されます。
 http://www.book1st.net/event_fair/event/page1.html



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 美術学校に通って二年目くらいの頃に渋谷パルコの地下の書店で、「ハイスクールU.S.A.」という本を見かけた。すでに著者である山崎まどか先生と長谷川町蔵先生の存在を知っていたので、著者名から注意を引かれて手に取ったのだけれど、その内容はぼくの憧れていた世界に関しての細かな解説だった。
 ぼく自身が中高生だった頃、とにかく海の向こうの同年代たちに憧れたものだ。それは恐らく、純粋な興味からというよりは、自分が置かれていた閉塞的かつ退屈な環境への反動のためだったと思う。ティム・バートンなどの映画を通して、どうやら向こうの学校生活には黒ずくめの悪趣味な除け者がいるということを知り、そいつらはもしかすると自分と同族なのかもしれない、と心の拠り所にし始めたのがきっかけだと思う。その反面、ディズニー・チャンネルで見るような原色と解放的な雰囲気に彩られた活発な同年代たちにもどこか魅了された。クラスメイトたちが夢中になっていたJポップに全く共感できなかったがためにアヴリル・ラヴィーンを手始めに洋楽に亡命したのも、ある意味ではありきたりな通過儀礼のひとつだったと思う。
 黒ずくめの連中、いわゆるゴス。これはぼくに「ぼくみたいなのはひとりじゃないんだな」という安心をもたらしてくれたのだけれど、やがてジョックスとかブレインとかギークとかナードとかいう用語も知った(今思えばこれらの用語を日本に紹介したのも長谷川先生と山崎先生なので、すでに最初からぼくはふたりの影響下にあったということ)。同じような立ち位置のやつらは日本の中学高校にもいたけれど、はっきりとクラスメイトたちにラベルが貼ってあるのが新鮮だった(もちろんあんな日本よりもきつそうな階級制度のある教室で生き延びる自信なんて無いのだけれど)。そして、「ハイスクールU.S.A.」にはその分類がイラスト付きで詳しく解説してあって驚いた。なんとなく言葉を聞いたことがあったけれど、イラストがついているだけで俄然イメージが具体的になり、ひと目でアメリカの学園生活がわかるような気さえした。
 いつかこういう本にこういう絵を描かせてもらえたらいいなあ、とイラストレーターとしての仕事についてぼんやりとしかイメージしていなかった専門学校生は思ったのだった。
 けれどまさか4年後にそれが実現するとは思わなかった。同じふたりの著者と、さらに前の本よりも一歩先を行ったテーマ。この感動と喜びを言葉にするのは容易ではなく、むしろどんな言葉にもしたくないという気持ちがあるけれど、ただただうれしい。点と点が結ばれていって今に至っているという感覚もとても感慨深い。

 この夏の読書にお手に取っていただければと思います。