あとから考えると正確には株の空売りをしたわけではないような……。細かいことは置いておいて、経済のことに興味が沸く。馴染みのないひとにとっては非常に難解な経済用語がばんばん飛び交うが、そのたびにいろいろとおもしろい説明の仕方をギミックとして用意してあって、「説明しよう!」と言わんばかりに有名人が突然出てきてユニークなたとえ話で解説してくれたりするので、飽きずに観ていられる。
それにしても00年代半ばのアメリカというのはこんなに浮かれていたんだなあ。日本人である上に当時は世の中に対して関心がない子供だったので、なおさら映画で描かれる当時の様子が新鮮に思える。劇中、住宅ローン破綻の可能性について主人公たちから話題を振られた相手が「暗い話はやめろ」と言い返すのが印象的。世の中全体がそういうテンションで、調子が良いときにひとは都合の悪い現実を見ない、考えないものなのだということがよくわかる。そんな彼らが最終的にどんな目に遭うのかはあまりそこまではっきり描かれない(なんとなく示唆はあるのだけれど、ほんのちょっとの描写だからこそゾッとするところがある)。
この映画は「大逆転」という邦題がついているけれど、スカッとするカタルシスがあるわけではなく、前半で主人公たちを嘲笑していた銀行や、低所得のひとにローンを組ませまくって儲けていたひと、浮かれ放題でその状況が永遠に続くと思い込んでいたひとたちが痛い目にあう、なんていうラストでは全然ない。それどころか主人公のひとりは「大逆転」の是非について苦悩さえする。最終的にもたらされるのは逆転によるカタルシスではなく、問題意識というわけ。ぼくなんかは難しいことはわからないので「お金儲けは大変だなあ」という感想が大きいのだけれど。