監督のコメントが濃厚すぎて圧倒されたので、さっそく原作を読み始めた。監督すら最初に読んだときに、どう解釈していいか戸惑ったというのだから、そりゃぼくがすぐにこの作品について思うところをまとめられるわけがないよなあ。けれど、だからこそ映画と原作をこれからじっくり咀嚼していけると思うと楽しい。監督は自身の信仰に疑問を抱き迷っている時期に「沈黙」を読み、より深く掘り下げて答えを見つけなければならないと思ったのだそう。
幕府の役人が宣教師たちにしたことは言うまでもなく暴力なのだけれど、宣教師も日本に自分たちの宗教を唯一の真理として外部から持ち込んだのであって、これもまた一種の暴力である、というコメントが印象的だった。ふたつの暴力のあいだで、セバスチャン・ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)はそれまで持っていた宗教観を崩され、一度空っぽになったところで真の信仰に目覚める。その姿が美しい。「沈黙」は信じることも疑うことも含めた非常に包括的で、相手を否定するのではなく受け入れる、弱きを抱擁する作品なのだと語っていたところも印象に残った。みんなが強くある必要はなくって、まずは除け者にされているひとをひととして知ろうとすることが重要なのだそう。
作品をつくり、それと付き合っていく過程、まだ続いているその関係全体を「学びの旅」って呼ぶの、とても素敵だと思う。とても創作意欲が刺激された。
『沈黙 ーサイレンスー』は21日土曜公開。