2017/01/08

レイの正体 - オビ=ワンとの共通点


 レイがオビ=ワンの子孫である、と断定しようというのではない。ただ、こうして共通点を挙げていくと、その行為はとてもオビ=ワン的であり、スカイウォーカーの血を引く人間であるとは思えなくなってくる。

1.砂漠で独りぼっち
 EP3からEP4までのオビ=ワンの隠遁生活は過酷で孤独なものだったろうと思う。年月もちょうどレイの年齢と同じくらい。
 ブリティッシュ・アクセントに関しては、レイの親分であるアンカー・プラット(演:サイモン・ペグ)がそうだから、という見方もできるけれど、必要以上に強調されているように感じる。

2.マインド・トリック
 フォースの技としては定番かつ象徴的なので、今まではあえてオビ=ワンと結びつけようとは思わなかったけれど、よく考えて見ればこの技はオビ=ワンの得意技と言える。映画でこの技を一度も失敗しないのは六部作通して彼だけなのだ。EP1では師のクワイ=ガンが、EP6では弟子のルークが使うが、ふたりとも二回のうち一回は失敗してしまう。彼らの場合は使う相手が悪かったのだが、それも含めてこの技を使える状況に恵まれていない。クワイ=ガンはオビ=ワンの師だから、ルークはオビ=ワンの弟子だからこの技を使ったということでしかなく、第1作目で最初にこの技を通してフォースの力を観客に見せたオビ=ワンがこの技のオリジンと言えるだろう。
 そもそもレイが相手取ったのがストームトルーパーという時点で、このシーンは同じくトルーパーを相手にしたオビ=ワンのシーンに対応していると思う。

3.ライトセイバーをルークに渡す
 思えばルークに対してだけでなく、オビ=ワンはアナキンにもライトセイバーを渡すシーンがある。つまりスカイウォーカーに剣を渡す役割なのだ。レイもその役割を受け継いでいるとしたら、ケノービと関係のある人物ということではないだろうか。

4.棒を使う
 棒を使いこなすふたりだが、ブラスターに関してはふたりとも同様に不慣れだったりする。不慣れながら仕方なくこのレーザー銃を使って危機を逃れる描写も重なる。
 レイがハン・ソロからブラスターを渡されるのも意味深、というか皮肉だ。ハンはかつてオビ=ワンに向かってフォースやライトセイバーよりもブラスターの方が優位であると断言していたけれど、結局レイのブラスターがカイロ・レンに対してなんの役にも立たなかったことは、ハンよりもオビ=ワンの正しさを強調するかのようである。レイの放つレーザーを難なく弾き返すカイロ・レンの本名が「ベン」であることも忘れてはならない。

5.ハン・ソロとのフォースをめぐる会話
 EP7の予告編で観て以来「ハン・ソロがフォースを説く側になった!」ということにびっくりしてしまいこの会話シーンの本質的なところに気づけずにいたが、レイをオビ=ワンに対応させるとEP4とEP7の会話はそっくりひっくり返ったものになる。ハンの台詞も本当に真反対になっているのがおもしろい。

6.最初から決闘
 三部作の最初から決闘するのはスカイウォーカーの役割ではない。アナキンもルークも1話目ではまだ自ら剣を抜かないのだ。最初から決闘するのはケノービの役割と言える。

 オビ=ワンと大きな共通点を持つキャラクターはレイだけではない。カイロ・レンの本名はベン・ソロ。ベンはオビ=ワンが隠遁中に使っていた名前で、ルークとハンにとってはこちらのほうが馴染み深い名前だ。ハンはEP4で最後までオビ=ワンとわかり合うことができなかった(「化石みてえなじいさんだぜ」)が、後にその偉大さを改めて知り、悔恨や親しみの意味をこめて息子をベンと名付けたのではないか。その息子はその名前をつけられたことに重圧を感じ、名前の由来となったジェダイ・マスターよりも、最強のジェダイにしてシス卿だった祖父の方に憧れるようになったのではいか。彼はダース・ヴェイダーとベン・ケノービ、アナキンとオビ=ワンという究極的な二大人物の間で苦しんでいたのだ。
 そう思うと、EP7『フォースの覚醒』の鍵はオビ=ワンにあるような気がする。同時に、オビ=ワンがシリーズ全体の中心にいるように思えてくる。ダース・ヴェイダーのヘルメットの残骸は、暗黒卿の影響が死してなお後世に遺り続けていることを象徴するようなアイテムだったが、死してなお影響を遺したのは彼だけではないかもしれない。かつてヴェイダーに殺される間際に「死してなお私は強くなる」と言い遺したオビ=ワン。EP7でフォースを覚醒させたレイはライトセイバーを初めて握ったにも関わらず、相当の訓練を積んでいたはずのカイロ・レンを圧倒する。あの強さはどこから来ているのか?ぼくにはオビ=ワンの最後の言葉がヒントのような気がしてならない。
 レイがアナキンのライトセイバーに初めて触れたときに見るフォース・ヴィジョンの中で、フォースと一体となったオビ=ワンがレイの名を呼んで語りかけるという大きな接点も重要だ。フォースがオビ=ワンやヨーダの声を借りてレイに語りかけたのか、オビ=ワンの意志がフォースの中からレイに語りかけたのか。一体化によってオビ=ワンの精神とフォースが同義であること、かつてフォースの意志によって生み出されたアナキンのようなジェダイがいたことを考えれば、レイの出生の秘密に一歩近づけるかもしれない。
 新しい三部作の主人公がケノービ側の人物で、今度はルークがそれを訓練する立場であるなら、バトンは受け継がれ、サイクルが出来上がる。サーガ全体がスカイウォーカーだけの物語ではなく、スカイウォーカーとケノービの物語であるという見方ができるようになるのだ。