などと言うとなんだか主流とは違うところに魅力を見出したがりなオタクといった印象を持たれるかもしれないが、それを意識していないと言えば嘘になる。オタクとはそういうものだ。
『ホリデー・スペシャル』は第1作目公開の翌年1978年(日本ではこの年にEP4が公開)にテレビで放映された、元祖スピンオフ映像作品である。『ローグ・ワン』よりもはるか昔に、マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、ハリソン・フォードといったメイン・キャスト主演で実写の外伝作品がつくられていたのだ!と言うとすごいものに聞こえるが、内容は言葉では非常に表現しづらい独特さで……いや、はっきり言って現在の感覚で観ればとてもチープでゆるい。だが、本来のポップなスペース・ファンタジーとしてのSWのイメージと決して相容れぬものではないとぼくは思う。これくらいのキッチュさというか、大味な側面もまたSWの持ち味なのではないかと。着ぐるみ特撮映画なのだし。
一言に『ホリデー・スペシャル』といってもその内容はいくつかのパートに分かれている。チューバッカの里帰りが物語の主軸だが、大半はチューバッカの家族が彼を待っている間にテレビで視聴する料理番組や音楽番組、ちょっとした短編ドラマ等で占められる。その間にもミレニアム・ファルコン号でハン・ソロとチューバッカが旅路を急いでいたり、家の中に帝国軍が押し入ってきて反乱軍との繋がりがないかどうか探し回ったりという具合に進行していく構成。
宇宙の料理番組とか音楽番組とかは全然おもしろくないし、ホログラムのサーカスもどこがSWなんだと言いたくなる代物なのだが、なにせ一作目が公開されて間もない頃で、設定だか世界観だかが確立されていない時期だから仕方ない(ルーカス監督自身の中では確立していたかもしれないが)。どこかディズニーランドの旧スター・ツアーズにも通じる、がちがちに固められていない感じなのだ。
その中で挿入されるのがアニメーションの短編である。これも作画や色使いがまた独特なのだけれど、なによりこのアニメで賞金稼ぎボバ・フェットが初登場する。次作『帝国の逆襲』に登場するのとは全然違うカラーリングで、なんだかかわいらしいのだが、こちらが先である。次回作に登場する新キャラを先行してアニメに登場させるという方式(?)はその後も、EP3に先行してアニメ『クローン大戦』に登場したグリーヴァス将軍、『ローグ・ワン』に先行して『クローン・ウォーズ』に登場していたソウ・ゲレラ(彼の場合はCWから逆輸入されたような形だが)といったようにパターン化している。これにより現在アニメ・シリーズに登場しているキャラクターが次の映画本編に登場するのではないかという予想や考察がなされているのである。
とある惑星に墜落したミレニアム・ファルコンを助けにかけつけたルーク・スカイウォーカーはボバ・フェットと名乗る装甲服の男に助けられる。ボバとルークがファルコンにかけつけると、ハン・ソロが呪いの護符によって意識を失っており、ルークも同じく倒れてしまう。そこでドロイドたちを残してボバとチューバッカが街まで薬(?)を探しに行くのだが……。と言ったようなお話。なんとボバは最初は親切な助っ人として登場するのだ。かっこよくて頼りになる謎の人物。もちろんその後正体がバレるのだが、バレたあとの所作がまたかっこいい。C-3POから賞金稼ぎの正体を告げられて驚愕の表情を浮かべ始めるルークの顔とゆっくり後ずさりするボバが交互に映り、賞金稼ぎは「また会おうぜ」とかなんとか言いながらジェットパックを噴射させてファルコンの船内から飛び出して行く。天井に突然都合よく穴が開くのだが、この穴はおそらく次作でランド・カルリジアンが空中都市の底にぶらさがったルークを助けるときに使ったハッチと見ていいだろう。たぶん。正史として扱ってなんら不都合はないストーリーである。
ボバとチューイが行動を共にするのもおもしろい。まあ、肩からウーキーの毛皮を垂らした謎の男をチューイが信用するのかという疑問があるにはあるが、まだあれがウーキーの毛皮だという設定もないのだろう。ただ、今では特別篇のEP4にて、ハンに借金を取り立てにきたジャバ・ザ・ハットの取り巻き用心棒の中にボバの姿が追加されてしまっているので、ハンとチューイがそのことを覚えているのなら、少し矛盾が出てきたりもする。
というわけで『ホリデー・スペシャル』のアニメこそボバのオリジンなのである。