2019/12/10

「SPUR」2020年1月号



 「SPUR」2020年1月号の映画レビュー連載は、『シャイニング』の続編に当たる『ドクター・スリープ』。前号の『IT』に引き続き二回連続スティーブン・キングものです。雪に閉ざされたホテルでジャック・ニコルソン扮する実の父親に殺されそうになるも、母親とともに生き延びたダニー少年の40年後を、我らがユアン・マクレガーが演じる。特別な力「シャイニング」の使い方やホテルでの惨劇以降自分をつけ狙ってくる幽霊たちを退治する方法を身に付けたダニーが、自分と同じ力を持つ少女と出会ったことにより戦いに巻き込まれ、ついには再びあの展望ホテルに足を踏み入れることに……。

 『シャイニング』劇中での光景が回想として入るが、実際の映像と見紛うほどの再現度。それだけでなく、事件直後の後日談として、母とダニーのふたり暮らしの様子なども描かれる。当時のシェリー・デュヴァルやジャック・ニコルソンをCGメイクアップで再現するなどということはせず、全く別の役者がそこまで顔を似せることもなく雰囲気だけで演じているところがなかなかすごい。結構それらしく見える。こういうのを見せられると、このキャラクターはこの俳優でなければだめ、というようながっしりした縛りが緩み、キャラクターそのものの概念というか、象徴的なイメージが強くなるような気がする。バットマンはいろいろな俳優が演じてもいいというのと同じような感じ。

 『レディ・プレイヤー1』でも『シャイニング』のシーンを再現していたのが記憶に新しいので、似たようなパロディに見えないかどうか気になったけれど、丁寧な雰囲気作りでちゃんと『シャイニング』の続編に仕上げていたと思う。スティーブン・キングがスタンリー・キューブリックの映画版をあまり気に入っていなかったのは有名な話だけれど、今作はそんな原作者とキューブリック映画のファン両方に気を遣ったような、ちょうどいいところに落ち着いている印象。と言ってもぼくは『シャイニング』の原作も『ドクター・スリープ』の原作も読んでいないのだが。キューブリックの映画版とは少し違うノリの部分は原作由来だろうなあなどと読んでみた次第。『IT』もそうだけど、キング作品もそのうち読んでみたいなあ。