2016年11月8日

日記:11/3 - 8

2016/11/3 木

 2日の結婚式は19時のアフターパーティお開きをもって終了。一年前に式場を予約して以来つねに「準備をしないとまずいぞ」という声が頭上から降ってくる日々だったけれど、それももう終わり。一年ぶりにそのプレッシャーのない日々が戻るというわけ。19時半くらいに最後まで粘っていた友人たち(壁にプロジェクターで映し出していた『ジェダイの帰還』をクライマックスまでみんなで観た)を見送って、さっそく片付けに入る。途中披露宴のあいだ中座のために食べていなかった魚料理を改めて用意してもらう。みんなから好評だったというだけあってとても美味しい。持ち込んだ飾り等は半分を配送、半分をそのまま持ち帰りにした。ぼくらの帰りに合わせたかのように雨が降り始める。雨の中荷物をくくりつけた台車を引きながら地下鉄で帰った。その様子はとても数時間前までパーティの主役だったふたりとは思えないほどくたびれていたはずだ。
 翌日3日はほとんど寝て過ごした。ベッドの位置を、枕が窓際にくるように動かしたので昼のあいだ入ってくる日差しは気持ちがよい。

2016/11/4 金

 式にも来てくれた友人ふたりと、新宿までVR体験に行った。彼ら同士は式の日が初対面だったけれど、共通の話題が結構あったので意気投合したらしい。同じテーブルにして良かった。『スター・ウォーズ』が好きならそれだけで十分だ。もちろん同じものが好きだからといって必ずしも仲良くなれるとは限らないが、この場合うまくいったみたい。
 初めてVRのヘッドセットをつけたが思っていたよりも外の光が入ってきて画面への没入感が今ひとつ削がれる。でもおもしろかった。瓦礫にはさまれたままゴジラが東京駅を破壊するのを見ていることしかできないプレイヤーという、救いようのないシチュエーション。だんだんゴジラがこちらに近寄って来てその巨大さが際立ち、踏み潰されるか、口からの放射熱線で焼かれるかして終わるのだろうか、と思っていたら、なんとゴジラが歩くことで宙にまきあげられた岩のひとつに潰されて終わった。救いがない。
 それからは特に目的がなかったので三人で御苑へ行った。思えば妻と最初に出かけたときも御苑に来た。今くらいの時期に。御苑にはペットだったのが逃げ出して野生化したインコが受け入れられた上で生息していることを知った。「カミツキガメと違ってインコはかわいいからオッケー」ってことではないと思うが、実害が少ないからこういう扱いになるのだろうか。
 散策を終えてからは久しぶりに秋葉原に行って、それから上野まで歩いた。適当にお店を覗いて、歩くだけだったけれど、話題がたくさんあるので楽しい時間だった。

2016/11/5 土・6 日

 とりあえず家の片付けをしなければ通常の生活には戻れない。もとから狭い部屋だ、工作をしたりして材料や道具を広げるともはや足の踏み場もない。夏以降ずっとこんな感じだったので、一気に一通り処分。式の準備のためだけにあったような物は、もはや他に使い道も見当たらないので捨てる。物置と化していたテーブルの天板が久しぶりに現れる。
 家で改めて片付けをしていてふと思ったが、非常にお祭りの後のような寂しさがあった。

2016/11/7 月

 メリル・ストリープがうそみたいに音痴な演技をする映画『マダム・フローレンス!』の試写に行く。思い切り外した歌がたくさん流れるのだけれど、音感の良いひとってこういうの聴いてられるのだろうか。『ブルックリン』でシアーシャ・ローナンに意地悪する雑貨屋のおばさん、ブリッド・ブレナンが優しいお手伝いさん役だった。大きな眼で頬骨の高い、綺麗なひとである。もっと出演作観たいな。

2016/11/8 火

 実は9月の終わりあたりから犬が顔面神経麻痺っぽくて、獣医からは脳腫瘍の可能性も否定できないと言われていた。それを聞かされた日は結婚式の準備も大詰めにさしかかろうというのに、妻とふたりでお通夜のようなテンションであった。当の犬はもちろんそんなことも知らずけろっとしていた。それよりも前から気になるところがあったので最初は近所の獣医に診てもらっていたが、そのお医者はどうも触診も適当だし犬をまじまじと見つめては首をかしげるだけで全然頼りにならないから、前住んでいたところでかかっていた獣医に診てもらって、ようやく顔面神経麻痺だということがわかったという次第。適当な診察よりはちょっと大げさなことを言われるくらいの方がいいので(だいたい後で診てもらった方の獣医さんは触診の手つきや観察の眼差しが違うのだ)、顔が麻痺していて脳腫瘍かもしれないというならMRI検査などをして前進させようということになり、この8日の火曜の朝から設備のある専門の病院までよいしょよいしょと連れて行った。
 いろいろな犬がいて、皆優しそうな顔をしていた。診察室の方からは苛立った猫の唸り声がずっと聞こえていた。獣医さんの診察がはじまり、退屈そうなコーギーのあちこちを触る。やはり触診の手つきが違うぜ。全身くまなくなにかを探すように触っていく。MRI等の検査のためには全身麻酔をかけなければいけないので、そのリスクについてご了承ください。あとお金。結構かかります。大丈夫、ペット保険があるから大した額にはならないはず、とぼくと妻はたかをくくった。お金についてたかをくくるのがぼくらの悪い癖だ。出された見積書を見てぎょっとする。保険負担額は1万とちょっと。請求額は15万くらい。ふぁっ? 実は1日の保険負担額の限度がそのくらいなんだって。じゃあもっと高額な手術なんかをするときはどうするんだろう。そういうときも一回につき一万いくらしか引かれないの?ふぁあ。しかし、じゃあやめておきますというわけにもいかない。原因やどういう症状なのかがよくわからないまま不安な日々をおくるくらいならはっきりさせたほうがいいに決まっている。結婚式終わったばかりで財布がだいぶ軽くなっているところにこの出費はだいぶ厳しいのだけれど、もし自分の親きょうだい、あるいは子供が同じようなことになったら、迷っている暇はないはずで、それは一緒に暮らしている以上犬に対しても同じ姿勢を取るべきである。ぼくがこんなふうに考えるようになるとはね。さあ、先生、お金は払うから存分に調べてくれ!
 犬を預け(去勢手術のときもそうだったが、獣医が犬をかかえてそのまま奥の方へ姿を消してしまうときはちょっと恐ろしくなるものだ。もし麻酔から覚めなかったら?これが最後になってしまう)、夕方頃また引き取りにくることにして、近いのでいったん妻の実家へ向かう。本は持って来ていたけれど、こんなことなら多少絵を描く道具があってもよかったな。しばらく読書していたが飽きたので昼寝に切り替えた。途中で新しい仕事のことで電話がくる。式の準備のため半月くらいは連載以外に新規の依頼を受けないようにしていたので、そのまま仕事が減っていったらまずいなと不安だったのだけれど、こうやってまた仕事がもらえるのはうれしい。いずれにせよ作業は家に戻らないとできないので、犬を迎えに行く時間まで眠る。
 病院から電話を受けた妻が嬉々として起こしにくる。犬は普通に目覚めているので迎えに来るようにという電話だった。エアバギーを押して徒歩で病院に向かう。とても冷え込んでいた。冬の夕方である。スタッフが抱きかかえて連れて来た犬は、もうすっかり目も覚めて本調子のようだ。検査のために首の後ろの毛がきれいに四角く刈り取られて格好悪くなっていて、抱きかかえてお腹を見たら、お腹もそっくりごっそりと毛が刈られている。超音波検査のためである。お前はこんなに乳首があったのかい。犬の毛の生えてない皮膚の奇妙な感触といったら。寒そうだから帰ったら服を着せてやりたい。
 検査の結果、特になにも異常がなかった。安心を買ったというやつ。でも顔が半分麻痺しているのは事実。こういうのは原因がわからず、だんだん治ってしまうものも多いとか。とりあえず血液検査をするので2週間後また来るようとのことだった。
 帰り道、麻酔でぐっすり寝ていたからか(?)犬はぴんぴんしていてどこまでも前のめりでずんずんと歩いていく勢いだった。
 最初の適当な診察をした獣医に負担させたいくらいである。