事故の直後から物語は始まり、聴取に対する機長の証言や回想を通して事故の経緯が描かれていく、その時系列の並び替えの工夫がとても効果的で、この有名すぎる上にまだ記憶に新しい、結果の知れている出来事が違う側面から浮かび上がってくる。
事故時の刻一刻と変化していく緊迫とした状況を味わっていない人々からの追及に普通なら苛立ちを覚えてしまうかもしれないけれど、その厳しい追及をしてくる彼らも、サリー機長同様に自分たちの仕事に忠実なだけ。そのことをよく理解している機長は相手の立場もよく尊重した上で、自分の決断が正しいということを証明しようとする。その様子も気持ちが良いんだけれど、飛行機が不時着水した際の人々の行動の速さにも心打たれる。機長はじめ乗務員の行動も迅速だし(乗務員は機長と副機長のほかに客室乗務員3名のみ)、近くにいた通勤フェリーもすぐに駆けつけた(なんと着水の4分後!)。みんなが懸命に他人を助けるために動いているあの感じ。生きたパイロットが飛行機を操縦することの価値すらも感じられた。ほかのあらゆる仕事についても。だからなのかな、事故の緊迫感は恐ろしかったけれど、なぜか観終えたあとには飛行機に乗りたくなっていたんだよね。
前作『アメリカン・スナイパー』(2014)に続くノンフィクションものなのだけれど、この調子でノンフィクション・シリーズが続くのかな。『アメリカン〜』の後だから余計に今作の希望に満ちた感じが際立つ。もちろんあちらも良い作品だったと思う。
それにしても映画を撮るペースがはやい。あとトム・ハンクスの顔がとても卵みたいだった。