2019/06/30

「SPUR」8月号



 「SPUR」8月号の映画レビュー連載では、「COLD WAR あの歌、2つの心」を紹介しています。戦後間も無いポーランドで音楽家ヴィクトルと歌手志望のズーラが出会い恋に落ちるが、やがてヴィクトルは西側への亡命を決意。当時まだ壁が建設されていないベルリンを経由してふたりで脱出するはずだったが、直前にズーラが断念。ヴィクトルは独りでパリへ渡り、ズーラは国に残る。ふたりはそこから15年もの間、鉄のカーテン越しに再会と別れを繰り返すことになるのだった……。タイトルはずばり「冷戦」だけれど、よくイメージされる冷戦の物語ではない。東西の指導者やスパイといった人たちの駆け引きなどはないし、もちろん戦乱も描かれない。ただ隔たれた恋人たちがいるだけ。そんな小さな視点の物語だけれど、めちゃくちゃパワーがあって、そんなラブストーリーを「冷戦」と名付けるところがいい。ポーランドの民族舞踏なども出てきて音楽もインパクト大。大局的なお話だけでなく、個人的な物語もまた時代と世界を持っているんだなあ。