2019/03/27

SPUR 5月号



 「SPUR」5月号の映画レビュー連載では、先週から公開となった映画『バンブルビー』を紹介しています。『トランスフォーマー』シリーズのプリクエル(前日譚)、なんだけどこれまでの『トランスフォーマー』映画の内容とちょっと噛み合わないところもあるらしい。でも一本の映画として大変おもしろく、かわいく、かっこいい作品なので、とりあえずそういうのは気にしない。主人公は『スウィート17モンスター』で難しい17歳を演じたヘイリー・スタインフェルド。今回はひとつ年を取った18歳のタフガール。手と顔を汚して車をいじる姿がクール。ヘイリーは『スパイダーマン:スパイダーバース』のスパイダーグウェンの声を担当しているので、今年のナードアイドルの顔になるんじゃないかと思う。

 黄色い車の映画ということで、黄色好きのぼくとしてはなんとしても描きたかったが、実はぼくが黄色という色が好きなのには、なにを隠そう黄色い車が関係している。小さい頃、あれは夕方だったのか、早朝だったのか、とにかく青みがかった薄闇の中、父親の運転する車で海岸を見に行くことがあったのだが(海の様子を見に行くのは波乗りをする父の日課)、その近辺に家並みの中に、その黄色い車があった。通りかかるたびに父がそちらに注意を促す。そのうちに通りかかるたびに、今日も黄色い車がある、今日はいない、なんていうように気にするようになった。ような気がする。それがどんな車かはよく覚えていない。父が特に気にしたところを見ると、ピックアップトラックとかそんなところだろう。記憶の中で実際よりも強調されているかもしれないが、青みがかった薄暗さの中で、その黄色い車がぱきっと浮かんでいるのが印象として残っている。

 『バンブルビー』の主人公チャーリーは、映画が始まった時点ですでに父親を亡くしている。母親はすでに新しい恋人を迎えていて、弟もそっちになつきはじめている。でもお父さんっ子だったチャーリーはなかなか現実に向き合えない。ほかの家族とは距離を置いて、ひとり車をいじっている日々。そんな中、黄色いビートルに変身して地球に潜んだバンブルビーと出会う。

 黄色い車とお父さん、っていうところで、個人的にもいい感じの映画だった。いや、ぼくのお父さんは元気でやっているけれど。ロボットたち(ロボットって呼んでいいのかわからないが)のデザインが昔のアニメを意識した感じになっていてよかったな。去年コミコンでおもちゃの展示を見て以来、「トランスフォーマー」が気になっていたので、これを機にいろいろ見てみようか。