『クローン・ウォーズ』、『ハン・ソロ』、『反乱者たち』という三つの時代でどう変わったのかを考える。CWを生き延びた後で犯罪組織のトップに君臨できたのは戦時中にそういう連中とつるんでいたりして暗黒街に精通していたから(そりゃ全身刺青入れてるあんなおっかないやつがギャングのボスにならないわけがないよな……)。そもそもEP1以前にシディアスの命令でブラック・サンの要人を抹殺したりしているのでその時点から闇社会にはかなり通じている(レジェンズ設定だが、CW製作陣は少なくともこのことを参考にしている)。シディアスやその師であるプレイガスはジェダイへの復讐と銀河支配のために裏の世界に影響力を持っていたわけで、犯罪組織と手を結ぶのはシスお馴染みの手段。案外CWでのモールも師たちのやり方を参考にどんどん勢力を伸ばしたのかもしれない。
『ソロ』のモールはおよそ20年ぶりにレイ・パークが演じたとあって、だいぶ貫禄があった。ガタイはいいがほっぺにボリュームがある。アニメのモールは顔が面長でスマートで物足りなかったが、下半身を失ったまま半狂乱になってゴミ溜めで生き延びていたのだから痩せていても変ではない。研ぎ澄まされているということ。やたらとしゃべるのはずっと独りだったからだろう。小説「ダース・プレイガス」によればドロイド相手に訓練に明け暮れる日々、時折シディアスが様子を見に訪ねてくると結構うれしかったらしい。かわいいじゃん。
『ソロ』では犯罪組織のボスなので、食事も栄養もよく取れていることだろう。下半身が丸ごと機械だと普通の食事でいいのかどうかはよくわからないが。その機械の両足もCWとはデザインが違うようだが(なんだかロボコップみたいになっている)CWを経て装備が変わっていても不思議はない。コミックとか読んでないのでわからないが、シディアスに負けた後下手をしたら義足が奪われていたかもしれないし、戦いで破損したのかも。
『反乱者たち』では主人公エズラにダークサイドを説く闇仙人として登場する。独り。上半身は裸。隠れて暮らさなければならないらしく、ギャングのボスの頃よりも過酷なせいか痩せに戻っている。『ソロ』のあと、彼の犯罪組織は帝国軍に攻撃されたか、ライバル組織との抗争によって壊滅したか、彼自身が裏切れて破滅したのかもしれない。シディアスに裏切られた彼のことだから最終的な目標は皇帝に復讐すること(もちろん生きているとわかればオビ=ワンも)、さらに帝国を乗っ取ることも視野に入れていただろう。帝国との敵対は必須である。クリムゾン・ドーンなる組織の規模はよくわからないが、CW時代にモールが率いた組織シャドウ・コレクティブがある程度元型になっているならそこまで小さくはないだろう。帝国にとって目障りな犯罪組織となれば標的にされる。『ソロ』劇中でケッセルのスパイス鉱山を牛耳っていたパイク・シンジケートという組織はCWでシャドウ・コレクティブに加わってモールに協力していたが、分離主義勢力との戦いで多くの犠牲を出すと同盟関係を終わらせた。間接的とは言えモールの命令で動いていたベケットやソロたちがケッセルで連中と敵対するのはそのため。このようにモールには敵が多いので、『ソロ』から『反乱者たち』までの間に決定的な敗北をして多くを失う。全てを失ったモールにとって、自分と同じく隠遁の身になったオビ=ワンと対峙することは唯一の救いだったのだろう。ここで憎きケノービとの決着さえつけられれば、自分の存在には意味があったとでも考えたのかもしれない。
まあ顔つきが実写映画とアニメで違うのなんて、そんなのアニメのデフォルメだとしか言いようがないが、見た目が変わっているときとそのときの状況や身の上はそんなにズレてはいない。痩せているときには痩せているなりの背景がある。
こうして書いてみると散々なやつである。暗殺マシーンのごとく育てられてシスの野望の駒にされ、腰から上下に真っ二つにされながらも生きながらえて戻ってきてみたら居場所がない。シスとジェダイ両方を相手に独力で勢力を広げるも、とうとう父親同然のシディアスに敵視されこれに敗れる。密かに犯罪組織を率いて帝国の時代になんとか座っていられる場所を得るが、そこからもやがて追われる。最後にオビ=ワンとの一騎打ちに人生の全てをかけるが、あっさり敗れる。シスにもなれなければジェダイにも敵わず、暗黒街でも頂点には登れなかったモールは何者だったのか。何者でもなくなったザブラクの男は、オビ=ワンの腕の中で息を引き取る。