夏の終わりに虎ノ門のタミヤの店でティラノサウルスのプラモデルを買った。レトロな感じがいい。バンダイの綺麗で優しいキットばかり作っていたから、接着剤がないと組み立てられない、成型色が灰色一色の昔ながらのプラモデルは新鮮だった。作る感がある。恐竜の玩具が欲しかったんだけど、なかなか好みに合うものが見つからないでいた。シュライヒの精巧かつ頑丈な動物フィギュアの恐竜がコレクションには定番らしいのだが、どうもしっくり来ない。色が思っているのと違う。だいぶ細かく塗られているのだが、色味が全然好きじゃない。茶色とかくすんだ色ばかりで、明るい色があると思えば禍々しい柄だったりする。実際に地球上にいた生物としてリアルさを出しているのかもしれないが、生物学的な色彩などあまり求めていない。もっとバカみたいな緑色一色みたいなやつがいい。『ジュラシック・パーク』以前の、昭和の恐竜のイメージである。爬虫類的な緑色しかイメージされていなかった感じ。体型や形状も最新の研究に基づいてなんかなくていい。直立に近いポーズで頭が大きくて歯列がむき出しの、怪獣のようなティラノサウルスでいいのである。わかりやすい恐竜のイメージがいい。ウェスタン・リバー鉄道で途中遭遇するやつらみたいな感じでいいのだ。ストップモーションの初代『ロスト・ワールド』の感じでいい。
タミヤの恐竜キットはそのイメージにぴったりだった。見ての通りティラノサウルスもかなり妙な形である。頭が平らで並んだ歯の感じも非常に間抜けで素晴らしい。お尻がやけに膨らんでるところも着ぐるみの怪獣みたいだし、足なんてこれどうなってるんだ。粘土細工みたいなところなんかまさに古典特撮のようだ。というわけでバカみたいな緑色に塗った。何色にするか迷ったが、500円くらいのものなのでまた何個か作ってもいいかも。とりあえず普遍的な緑色にしたけど、あえて真っ黄色とか、どピンクにしてみても「そういう置物」らしくてかわいいかもしれないし、気が向いたらリアルさを意識して普通に塗ってもいい。まあ、この間の抜けた感じのレトロな造形にはあまりリアルな色は合わない気がする。
とりあえずバズ・ライトイヤーのフィギュアと並べて飾っている。自分なりにチョイスした玩具で『トイ・ストーリー』っぽい連中を揃えるのもおもしろいかもしれない。それこそタミヤの兵隊のキットを全部緑に塗ってマニアックなアーミーメンを作ったら楽しそう。