2018/10/29

『クレイジー・リッチ!』(2018)


 光と色の洪水に酔いながらも物語そのものは古典的でわかりやすい。だから楽しい。それを彩るのは、ナポレオンの予言通り巨大な獅子が目覚めた世界、フレッシュな映像、新しいパワー。見ていて飽きない。見ていて飽きないと言えば、オークワフィナ。髪型と顔つきの組み合わせがだいぶぼくに響いてきたんだろうな。特徴的な声でしゃべり続けるところも良い。衣装は何種類かあったと思うけど、資料が乏しいのでとりあえずいちばん印象的なウサギ柄を描いてみる。終盤でフワフワなスカートはいてるシーンもあったはず。最初に登場したときに着ていた犬柄の部屋着も良かったな。あの、お金持ちが着てるヒラヒラしたスカーフ生地みたいな部屋着はなんて言うんだろうね。ゴージャスなものは少し敬遠することがあるけれど、細部をよく見ると、当然良いものがある。映画を理由に憧れを抱くのは、それはそれで偏見に近いかもしれないが、アジア的ゴージャス感の見方が変わった。リッチではないけれど、ぼくもなにか自分の中のアジアンな感覚を発見したい。餃子が食べたくなるし、麻雀も覚えたくなった。

 クレイジー・リッチな世界に迷い込むシンデレラな主人公レイチェルが、生まれ故郷であるアメリカと、人種的ルーツであるアジアとの間に挟まれるというのも興味深い。同時に、決して裕福ではない移民かつ母子家庭な身の上でお金持ちの世界と出会うので、別々の世界に二重に挟まれるわけだ。移民二世としてアメリカからアジアに「戻って」くるというのは、間接的な里帰りの構図にもなっていて、どこかリベンジな帰還にも見えてくる。そういう意味ではレイチェルは単なるシンデレラではないんだな。彼女の「よそ者の目」を通して観客は煌びやかな世界を目にし、彼女は自分のルーツたるアジアを知る。少なくともその一面を。シンガポールも実際にどんなところか見てみたいな。高所恐怖症だから、ビルの上のプールは無理。