2018/10/15

初のトークショーを終えて


 10月13日のB&Bでのトークショーは無事に終了しました。お越し下さったみなさんどうもありがとうございました。登壇しているにも関わらず半ば都甲さんのお話に聞き入っている感じでしたが、ぼくの言ったことや尋ねたことがところどころで繋がっていればいいなと思うばかりです。

 B&Bのトークショーは何度か観覧しているのだけれど、まさか自分が向こう側で話すとは思ってもみなかったので、かなり感慨深い。初めてのことで、もとより人前で話すのが得意でないので、うまく言葉が出てこなかったり、なにか言おうとしても会話が進むにつれて忘れてしまい(流行りの言葉で言うと「頭が真っ白に……」みたいな)、言うタイミングを逃すなどして、口が重くなったりしたのだけれど、なにより都甲さんのお話はすごくおもしろかったし、会話自体もとても楽しかった。話すことを楽しむことが重要と、事前に都甲さんから言われていたので、それでよかったのかなと思う。1対1だと結構テンションが上がって話せるわけだから、もうちょっとがんばって大勢のひとが見ているところでもリラックスしてしゃべれるようになりたいな。実は書くだけでなく話すことも好きなんだな、ということに気づいたりもした。もしまた機会があったら、もっともっと話すことを楽しみたい。もちろんこれが最初で最後にならなきゃの話だけれど……。そんなわけで初のトークショーでした。

 読書体験というのは、同じ本でも時期によって全然違うものになるんだなあと、改めて思った。このトークショーに備えて「ライ麦畑でつかまえて」を読み返していたわけだが、初めて読んだときは年が近かったためかかなり近くからホールデンの奇行を見ていた気がしたのが、27歳になって読んでみると少し違って見える。微笑ましくもあるのだ。別にぼくだってそんなに年配になったわけじゃあないんだけど、あいつの一個一個の見栄の張り方とか格好の付け方とかが、前よりもさらにおもしろおかしいんだな。前読んだときも半分滑稽な感じではあったんだけど、今はかなりかわいく見える。本人は至って真剣なところがまたいい。それは別にバカにしているわけじゃなくて、よりおもしろく、愛らしいということなんだ。こうやって口調がホールデンに寄り始めるくらいに、やっぱりおもしろいんだよ。本当の話。「ライ麦」もだいぶ違った表情が見えるのだから、大好きな「フラニーとズーイ」も今読み返したらまた違うんだろうな。噛めば噛むほど味が出る、みたいなたとえはあんまり好きじゃないしこの場合合ってるか微妙なんだけど、なんだろうな、噛んでると色の変わるガム?いや、それじゃあまりにもチープすぎる。何年かおきに会うと友達が少しずつ変わっているとか、少し恥ずかしいたとえだけど、そんな感じではないだろうか。もっともっと読みたい本もあるけど、お気に入りの本はどんどん読み返してみよう。これから先読み返すたびに違う感想が出るんだと思うと、わくわくする。なにか一冊でも、ボロボロになってバラバラになってしまうくらい繰り返し読み返せたら、自分にとっても、もしかしたらその本にとっても幸せじゃないかなあなんてことを思う。